こんにちは、元公務員のシュンです!
いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!
今回は「公務員に向いていない人」をテーマに書いていきます。
どんな仕事もそうですが、向き不向きというのは厳然たる事実として存在します。
ただ、実際にやってみないと見えない部分だったりします。
僕はやってみて、向いていなかったので辞めました。
10年近くかかっちゃいましたが(笑)
以下では、僕が県庁職員として10年近く行政を観察してきた経験を踏まえてのぶっちゃけ話を書いていきたいと思いますので、これから公務員を目指す方に参考材料としていただければと思います。
公務員の仕事のやり方の傾向とは?
前例踏襲主義
公務員の仕事は、基本的に前例踏襲主義です。
過去何年ものファイルが取ってあり、それをめくって時系列に対応をしていけば同じように仕事が出来るような仕組みになっています。
そして、事業の大幅改変はあまり無いので(例えば10の事業があったら1〜2新規事業があるくらいです)、それで仕事が毎年回っていきます。
誰でも一定のレベルで仕事ができるこのファイリングシステムはとても素晴らしいのですが、前例にならわないと仕事が進まない(新規案件に対応が出来ない)というデメリットも生み出します。
横並び主義その1(外部)
公務員に求められることの一つに、「公平性」という観点があります。
あるサービスについて、A〜C市にいる住民なら受けられるのに、D市にいる住民は受けられないとなると、住民や議員からつつかれる材料にもなりますので、D市は凄く嫌がります。
じゃあD市もその事業をやろうかという話になっていきます。
これが横並び主義です。
逆に、A市だけがやっていて、B〜D市がやっていないサービスがある場合、A市の担当者が「他もやってないし予算も厳しいから止めよう」という提案をしたとします。
これも横並びといえば横並びですが、この案が通るかと言えばそう簡単ではありません。
各方面から突っ込まれたくない課長が嫌がるパターン、同様に部長が嫌がるパターン、知事や市長などが嫌がるパターン(知事や市長は選挙で選ばれるので、やめることよりもやっていることをアピールしたい)、そして最後には議員や事業者などの関連団体が待ち受けています。
つまり、事業をなくそうとする時ほど、内外からの抵抗が強いです。
(しかもその抵抗は、住民のためという本質的な話からではなく、自分のメンツとか権益とかから来ているものも多い)
よって、放っておくと事業が増える方向に行きがちなので、新規事業はむやみに立ち上げるべきではない(財政課が新規事業立ち上げに慎重になる)というところに繋がります。
イメージとしては、ある年の予算で10の事業があったとして、次の予算に向け、担当部局は1〜2を潰すが、5を新規に提案する。
財政当局と戦った上で、5のうち1〜2が新規で残り、結局10でトントンになる。
みたいな感じです。
→本来は、効果の無い事業はどんどんスクラップをして、その上で効果が見込め、かつ少ない施策に集中していくことが最大の効果を得ることが出来る筈ですが、そういう仕組みになっていないということですね。
これは国も地方も概ね同じだと思います。
横並び主義その2(内部)
また、出世も給料も横並びです。
僕がいた県では40歳過ぎくらいまでほぼ完全な横並びでした。
なお国の場合、総合職(官僚)は一般職とは違うレベルで出世していきますのでここは例外です。
官僚以外の公務員は、入庁後は当分横並びと捉えておいて間違いはないです。
(なお、官僚も官僚同士では当分横並びです)
要は、外の住民に対して何かの施策を実施する際も、組織内における職員間の待遇についても、横並びというマインドが強いのが公務員だということです。
国の補助金や事業に依存
国と県や市町村はそれぞれ独立している機関ですが、実際には補助金などで依存関係にあります。
例えば、国の当初予算や補正予算の中には、県に補助金を出す事業とか、県を経由して市町村に補助金を出す事業などが多くあります。
また、県が独自で市町村へ補助金を出す事業ももちろんあります。(これは国が絡む補助金に比べてかなり少ないです)
基本的には大半の自治体が借金経営ですから、財政は苦しい。
だから、補助金を活用して、自分たちにお金の痛みがない新規事業を立ち上げて行こうという発想になります。
(各自治体の財政当局は、全て補助金で賄う事業ならあまりうるさくは言いません)
国も色々と考えて、どこかの自治体で成功した事例を広げて行こうみたいな発想で予算を組んでいたりするのですが、残念ながら、こうした事業をただ取り入れても大した効果は出ません。
効果が出ない理由は大きく2点あります。
まず、人が全員違うように、自治体も全部違うので、単純に適用できるとは限らないという点。
次に、こっちの理由の方が大きいですが、「何も新規事業をやらないわけにはいかないので、国のメニューで事業を作ろう」という考えが先行していて、本当にその施策を導入して効果があるのか、そして、それに本気で取り組みたいのかという一番肝心なところがないがしろにされたままで予算化がされるという点。
そういうやっつけ仕事みたいな事業が成功するわけないです。
また、国が予算化した事業に手を上げる(うちの県とか市で、ぜひその事業やりたいです!と言う)スケジュールもめちゃくちゃタイトだったりするので、事業担当者は中身うんぬんより、とにかく提出するために必死に事業計画を作ったりしています。
このように、全体的にラットレースみたいな感じになってしまっています。
ちなみに、この補助金体制が本質的に最も無駄な国と地方の仕組み(国と地方の上下関係の強化、補助金事務の膨大な手間による時間のロス)です。
これが解消されない限り、本当の意味での地方自治というものが達成されることはありません。
公務員に向いてない人はこんな人
本題の、公務員に向いてない人について書いていきます。
要は、上で書いてきたような公務員の実態とソリの合わなそうな人は向いていません。
前例をぶっ壊して革新的なことをやりたい人
前例踏襲なんかクソ喰らえ、とにかく破壊と創造だ!みたいな気質の人は向いていません。
もちろん革新的なこともやれなくは無いですが、組織全体に前例踏襲の色が濃いため、それに立ち向かうだけの強烈なエネルギーが必要です。
僕自身は入庁当時、うちの県を全国に名が轟くような県にすべく革命を起こしてやるんだといった野望がありました。
ただ、そのエネルギーを持続し続けることが出来ず(それでも結構色んなことを変える工夫をしたほうだとは思っています)、結局は長い物に巻かれてしまっていましたね。
長い物に巻かれて将来出世してからやることも出来なくは無いでしょうが、30年とかかかってしまいます・・・。
ただ、部長クラスになると、結構癖が強く、若い頃から色々革新的なことをやってきた人もいましたね。
どうしても前例踏襲に傾きがちな組織から反発を受けながらも、やり抜くだけの強いエネルギーで乗り越えてきたのだと思います。
その場合、やっぱり「公務員の仕事が好き」ということがポイントになってくるとは思います。
どの分野でも、超一流のレベルになるには「好き」が絶対条件です。
能力がある人間が出世もするし、お金も貰うべきだと考えている人
能力主義的な考えを持っている人であれば、公務員の仕組みに幻滅する機会は多いです。
例えば、明らかに自分より仕事をやっていないのに、職位のランクが遥かに上で、高い給料を貰っている人がうじゃうじゃいます。
仕事をやらないのに多くのお金を貰っている上司への不満話は同期とよくしましたね。
強い能力主義的な考えや出世意欲が無かったとしても、若手であればこの思いを感じることになる機会はそれなりにあると思います。
なお、公務員は数字で表せないから評価がしづらいとか言う人が一部にいましたが、そんなのは言い訳です。
明らかに差はあります。
仕事の出来る人と出来ない人は明確に存在します。(もちろん真ん中が一番多いですが)
なので、能力主義に強くこだわる人は少し厳しい世界かなと思います。
多くの人の役に立って、感謝されたいと思っている人
人の役に立って感謝される。
残念ながら、僕は県庁にいてこれを感じたことはほぼ0でした。(予算などの内部管理的な仕事が多かったので、もちろん職員の方に感謝されることはありましたが、僕の中での役に立つ=県民の役に立つというイメージとは異なっていたということです)
県は、市町村や事業者へ補助金を出したりと、基本的には間接的な仕事が多いです。
直接住民に対してサービスを提供するというより、仲介業者的な役割ですね。
もし都道府県を選ぶ場合、そうした組織の特性は十二分に押さえておく必要があります。
それでは、市町村なら住民と心温かな感謝の応酬があるかと言えばそんなこともなく、市役所窓口の経験もある妻曰く、ほぼ感謝をされたことはないとのことです(笑)
それどころかむしろクレームの印象が圧倒的に強いという・・・。
ただこの点は、どの仕事においてもなかなか難しい部分ではありますよね。
どんな物事も、全てプラスということはあり得ない(というよりプラスと釣り合うマイナスが存在する)ですから。
ただ余談になりますが、現在のブログ運営では感謝の言葉をいただくことも非常に多く、個人的には強い満足感を得ています。
向いてないと思う人は、以下に魅力を感じるか?
公務員の恵まれた面のほうに強くメリットを感じるならアリ
先の話は分かりませんが、過去20年〜現在というスパンでを見ても、公務員の給料は安定しています。
(地方・国家の平均年収は40歳ちょっとで600数十万)
また、退職金も削られたとは言え、それでも地方公務員は平均で2300万くらいの額を貰っています。(これも先はどうなるか分かりませんが)
そして、土日祝日は基本的に休みです。
残業も部署によってはそれなりに多いですが、全体としてみればそこまでの激務ではありません。(霞が関はちょっと別ですが)
また、女性なら、子どもを産み育てるにはかなり良い環境です。
→大半の方は育休を1年以上取ります。最長で3年です。また、育休明けの短時間勤務が取れる体制も充実しています。
ちょっと向いてないかなぁと思っても、こういう福利厚生的なメリットの方が人生において重要で、ある程度仕事の仕組みに目を潰れる部分があるのであれば、公務員は選択肢としてあり得ると思います。
おわりに
どこまで行っても結局は価値観ですね。
これに尽きます。
これは自分で感じるものですから、誰かに相談するものでもないです。
俺公務員に向いてるかなぁ?とか、こういうメリットとデメリットで悩んでるんだけど・・・とか聞いても無意味です。
公務員になる前に向き不向きについて感じてみたいということであれば、インターンシップへの参加をオススメします。
ここまでの話を踏まえて行けば、なんとなく公務員の雰囲気とか感覚が分かると思います。
最後に、今回書いてきたことは、一般的な公務員像というところからはそんなにズレていないと思いますが、自治体(特に首長の影響が大きいです)によっても結構毛色は違います。
また、異次元の自治体なども存在しています。
長野県の下條村のエピソードなどは非常に面白いので、興味があれば検索してみることをオススメします。
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
>>公務員の適性(向き・不向き)をまとめた記事はこちらです