公務員の仕事内容

【公務員と民間の違い】銀行出向経験のある元公務員が解説(公務員の仕事は楽なの?その3)

こんにちは、元公務員のシュンです!

いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!

 

「公務員の仕事は楽なの?」シリーズの最終回です。

過去2回にわたって、「帰宅時間」や「休暇制度」について取り上げてきましたが、今回は「公務員と民間の違い」がテーマです。(1〜2回目は以下リンクの通り)

 

僕自身が、県庁から民間(銀行)に2年出向していたため、その経験を踏まえたリアルを書きます。

民間か公務員かで悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。




公務員と民間の仕事はどちらが大変か?

ぶっちゃけ公務員のほうが楽です

どちらが大変なのかというのは非常に個人の主観に依存する問いであるということは承知の上での話ですが、(出向していた銀行と比べてみて)公務員のほうが圧倒的に楽だと思います。

 

以下で両者の違いに触れながら、その理由を解説していきます。

 

公務員が楽な理由

公務員は、数字(ノルマ)に追われることがない

公務員にノルマはありません(色々な計画上の数値指標はありますが、ひどく形式的なものです)。

数字に追われないというのは責任面でも精神面でも負荷が少ないです。

 

民間はとにかく数字です。

 

利益が出なければ会社は潰れます。

また、利益が出せない=人の役に立っていないということですから、数字を出すのは当然のことです。

社員がいくら楽しそうに仕事をしている企業であっても、それはきっちり裏で数字を出しているということです。

 

つまり、常にお客様に喜ばれる工夫を考えなくてはならない、そしてそれが出来ない人は出世が出来なかったり、クビになる。

 

そういう点を踏まえて公務員を見ると、

公務員に営業ノルマは無く、お金を稼ぐ必要がありません。

そして、支出を減らす必要もありません。

 

・・・もちろん、これはかなり誇張をして書いています。

 

人口が今後どんどんと減少し高齢化も一層進んでいく中で、各自治体が生き残っていくためには、人工知能など先端企業を誘致したり、若い人たちを多く引っ張ってくるなどして、より多くの税収を稼ぐ工夫をしていく必要があります。

そして、多くの自治体が多額の借金を抱えている以上、徹底して支出を減らす必要があります。

国家レベルで見れば革新的な社会保障制度改革が必要でしょう。

 

実際、稼ぐための施策を積極的に仕掛けている自治体も数多くありますし、支出削減は財政課を中心に常に考えられていることです。

 

ただ、そうは言っても実態は・・・ということですね。

 

国や自治体を取り巻く環境がヤバいというのは各公務員とも頭では分かっていることですが、行動レベルで考えた場合、積極的にお金を稼ごうとか支出を減らそうというところに至らないような仕組みになってしまっているというのが実態なんですね。

 

例えば、(財政課を除く)各課では、予算を多く獲得したことが評価される一方、支出を減らしたことはほぼ評価されない仕組みになっています。

さらに、施策にどれだけ意味があったかという成果検証も疎かにされることが多い(新規事業を予算化することが目的化してしまっている)です。

 

我が部は今年の予算をこれだけ減らしました!なんて言ったら、この施策は必要だろ!と議員や色んな団体から突っつかれます。

(そのため、担当者が気にしなくても、偉くなればなるほどここを気にします)

 

一方、事業を新規に立ち上げれば、「住民や事業者のために新たにこんなことを始めました」と宣伝ができ、新たな事業をやって欲しいと言っていた議員の顔も立てることができ、時には議員からの質問に対し「その事業提案に対しては、現在こんな事業をやっています」といった抗弁に使えます。

 

本質に立ち返れば、ある事業はどれだけ人の役に立ったのか、費用対効果はどうだったかという点が重要で、しっかりとした検証がなされるべき(そしてダメな事業は即刻スクラップすべきであり、効果のある事業に財源を集中させるべき)ですが、そうした仕組みには全くなっていないというのが実情です。

(公務員が悪いというよりも、議員や圧力団体を含め、行政の意思決定を取り巻く環境がひどく場当たり的なものに覆われてしまっています)

 

よって、率直に言って無駄な事業が濫発します。

 

こうした不毛なサイクルに精神をやられる人はいるかもしれませんが、稼がなければ会社が潰れる、個人としても出世が出来ない、給料が増えないという「結果責任」がある民間に比べれば、場当たり的なその場しのぎの対応でなんとかなってしまう公務員は、精神面や責任面において随分楽な部分が大きいと思います。

 

実際、出向していた銀行で、ノルマのハードさとノルマ未達が出世や給料に直結するという環境を見ていてそのことは痛烈に感じました。

 

一方で、銀行にはガンガン稼ぐぜみたいな感じで生き生きとエネルギーに溢れている方も凄く多かったです。(県庁にいないタイプのノリの方が多かったのは非常に強く記憶に残っています)

ハードだけれど、ハマる人にとっては面白くて仕方がない(そういう人は、公務員の仕事はつまらないと感じるんだろうなという人が多かったです)ということですね。

 

もちろんそこについていけず、辞める若手銀行員もかなりいました。

 

この点、仕事の選択に当たっては、自分の気質とのすり合わせが非常に重要だと言えるでしょう。




公務員は、主体性が無くてもなんとかなる

民間と公務員の仕事のプロセスは、大まかに以下のような違いがあります。

民間
  • 数字をあげる必要がある
  • そのために何をするか考える
  • お客様に喜んでもらう工夫をする
  • 数字があがる
公務員
  • 業務が各個人に細分化して与えられる
  • 前例のファイルがある
  • 前例通りにやって行けば業務をこなせる
  • 日々業務をこなしてく

ひどく公務員が受け身だということが見て取れると思います。

 

人口減少に直面する時代(前例が無い時代)において、前例踏襲をしていたのでは非常にまずいのですが、現実には多くの公務員の仕事はこの流れで進んでいるのが実態です。

 

そもそも、手当の支給とか、飲食店の営業許可事務だとか、オリジナリティの発揮しようがない業務も多いですしね。

ただ、こういったことはいずれ全てAIで代替されてしまうでしょう。

 

AIの話は一旦置いておくにしても、

  • 自分に与えられた仕事について、前例を読み込んで淡々と処理をする。
  • 困難な案件に直面した場合であってもじっくりと前例を紐解きながら時間をかけて取り組めば、基本的には仕事を成し遂げられる。
  • そして、結果として目に見えての大きな差は付きづらい。

 

こういった傾向が公務員の仕事の特徴としてありますので、主体的に新たなことを行わなくてもなんとかなる部分が大きいということです。

 

もちろん、本来主体性が必要であることは言うまでもありません。(一方、公務員の場合はその主体性が削がれるような保守主義的な環境であるということも非常に重要な点です)

 

実際問題として、公務員の退職者数は非常に少ない

地方公務員(一般行政職)の普通退職者(定年ではなく、希望をして辞める人)は全国で6,459人です。(総務省「平成28年度地方公務員の退職状況等調査」より)

地方公務員(一般行政職)の職員数は全国で84万315人(総務省「平成28年4月1日地方公務員給与実態調査」)ですので、離職率は年間で0.77%程度、つまり、自主的に辞める人が100人に1人いないということになります。

 

一方で、民間企業における3年以内の大卒社員離職率は約32%、2年以内は約23%、1年以内でも約12%という数字が出ています。(平成28年度の厚労省の調査による)

 

公務員になった方が3年以内に離職する率は、単純に0.77×3と計算しても2.3%ですから、民間に比べて圧倒的に低いということが想定されます。

 

実際、僕の周りでも3年以内で辞めた人はほとんどいなかったです。

そもそも、同期の行政職50人くらいのうち、辞めた人自体が僕を含め2〜3人くらいしかいないんじゃないのかなと思います。

 

一方、民間を辞めて県に入ってきた若手も多かったですし、上の世代にも結構いました。

理由は色々でしょうが、「疲れた」「民間には向いていない」みたいな声が多かったですね。




公務員として辛い部分は?

お金を稼いでいない弱み

「俺らの税金で飯食ってんだろ」とか「税金泥棒」とか言われたとしても、自分たちでお金を稼ぎ出している訳でも無い以上(間接的には税収をアップさせるための施策をやっているとしても)、耐え忍ぶしかありません。

 

また、税金を払っているのだからサービスを受けて当然だという考えを持つ方ほど、大きな声を上げる(クレーマーとして役所にやってくる)のが実態です。

 

民間であれば究極的には、それならうちのサービスを使って貰わなくても結構ですと対応することも出来ますが(実際にはそう簡単では無いとしても)、公務員の場合、税金を払わなくて結構ですとは言えません。

もちろん無理な要求はどうやっても無理なので、根気強く説得をして納得してもらうしかありませんが、この点はなかなか辛い部分があると思います。

 

また、僕自身はこうしたクレームうんぬんというより、「成果としてお金を稼いでいない」ということに対してジレンマを強く持っていました。

「人の役に立つサービスを行った結果として利益が出て、その成果として給料を得る」というサイクルがないため、貰う給料の妥当性が良く分からない(少ないとか多いというのではなくて、そういう仕組みが自分自身の中で納得しきれない)、だから周りに対しても自信を持って俺はこれだけ稼ぐ仕事をしたんだ!というのが無い・・・。

 

考えてもあまり意味が無いことですが、その点非常にモヤモヤしてましたね。

 

出世・給料面で差がつかない

上で、「銀行にはガンガン稼ぐぜみたいな感じで生き生きとエネルギーに溢れている方も凄く多かった」ということを書きましたが、彼らは数字をあげることに純粋な面白さを感じていたように思います。

 

売れば売っただけ自分の実績が上がる、ボーナスも増える、出世もする。

 

これは出来ない人にとってはとても辛いですが、出来る人にとっては面白くて仕方が無いことだと思います。

要は、そういうマインドの人は公務員の場合どうしても物足りなさを感じることになります

 

サービス残業が横行している

公務員の残業代には予算制約があります。

(基本的には、課ごとに残業代が割り振られ、それが係などに割り振られ、さらに個人に割り振られるというような仕組みです)

 

よって、やればやった分残業代がつくということはありません。

しかし、終わらなければやるしかありません。

 

そのため、結果的にサービス残業が横行しています。

休日に仕事に出ている方は結構います(もちろん無給)。

 

また、労働基準監督署が助けてくれることはありません。

→国家公務員は労働基準法対象外です。地方公務員は対象ですが実質的には・・・といったところです。

(もちろん民間でも、実態としてサービス残業が多々あることは承知しています。ただ、労基署という最後の駆け込み寺があるかないかというのはそれなりに大きな差だとも思います)

 

銀行に出向した際に、残業時間がきっちりと管理されている(個人に時間が割り振られているのは県と同様でしたが、時間がパソコンのログイン・ログアウト時間で管理されている)のを見て、その差にはかなりの衝撃を受けました。

銀行の方にもそれ(県の残業時間の考え方)ってブラックだろと言われました。

(僕からすれば、銀行のエゲツないノルマのほうが断然ブラックだと思ってましたが(笑))

 

ちなみに銀行では、部下の仕事が終わらない場合、残業手当の対象外である管理職の方がその分を引き受け、遅くまで残って対応していました。

これも県庁では全く無かった話なので驚きました。

県の場合、もちろん上司はフォローしてくれますが、ベースの部分はいくら残業をしてでも担当者が作り上げるというのが基本です。

 

適正な残業管理の裏側にはそうした苦労があるのだと実感しましたが、管理職の方は部下よりもずっと良いお給料を貰っている訳で、成果報酬的な意味合いで考えれば非常に合理的であると感心もしたところです。

ただ、昔はそこまで残業管理が厳しくなかったようで、このやり方だと部下が育たないという悩みも上司の方は持っているようでしたが・・・。(確かに突き抜けるためには時間の絶対量が必要であるということは強く同意します)

 

話を公務員に戻します。

 

本当に良くないことですが、サービス残業が容認される環境にいると、残業すること自体を何とも思わなくなってしまうんですよね。

終わらなければ夜残ればいいとか、休日出てやればいいとかいう発想になっちゃうわけです。

 

仕事の量は完成のために与えられた時間を満たすまで膨張するという「パーキンソンの法則」がありますが、まさにこれの餌食になっている公務員は多かったように思います。

 

もちろん純粋に雑多かつどうでもいいような業務が多すぎるという問題もあります

一方、そういった業務を簡単に切り捨てられないという、前例踏襲の組織ならではの課題もあり、公務員を取り巻くサービス残業に関しては非常に根深い問題だと思います。




まとめ

  • 数字という結果責任が問われる民間に比べ、その点が非常に緩い仕組みを持つ公務員のほうが、責任面や精神面で楽な部分が大きいと言える
  • 実際、統計調査で見ても公務員の離職者は民間に比べて大幅に少ない
  • 一方、人によっては数字という分かりやすい指標でこそやる気が出る人もいる(要は、自分の気質の見極めが非常に重要)
  • また、サービス残業の横行といった公務員としての辛い側面もある

 

最初にも書きましたが、仕事についてどう感じるかは個人の主観(気質や価値観)に依存します。

 

例えば、

  • 人に物を売って、自分の売上成績がガンガン伸びて評価されることが快感な人にとって、評価が見えない公務員は苦痛でしょう。
  • 人と触れ合うのが嫌な人であれば、民間の営業は苦痛でしょう。(公務員における窓口業務も同様に苦痛でしょう)
  • 前例を覆して革新的なことをたくさんやりたいと考える人にとって、前例踏襲の壁が厚い公務員は苦痛でしょう。
  • 既に示されたルールやマニュアルを崩さずに仕事をしたい人にとって、ベンチャー企業にいることは苦痛でしょう。

 

つまり、ある人にとっては精神的にキツいということもあれば、楽しくて仕方が無いということもある、それは、公務員であろうが民間であろうが関係ないということですね。

 

よって、公務員か民間かというチョイスをするのであれば、業種の傾向と自分の気質をマッチングすることが非常に大切になってきます。

 

公務員であれば、全体的には窓口対応(接客)より事務的な仕事をする機会が多いですし、同じ公務員の中でも国家と地方、地方でも県庁と市役所で仕事の内容がかなり異なります。

また、公務員は基本的に広く公平・横並びという視点があるために、ずば抜けて1位になるというような施策を積極的には取らない傾向にありますが、民間であれば、その業界でトップを狙ってどんどんと仕掛けていく方向が基本にあるでしょう。

 

こういった業種ごとの分析をするのはもちろん、自分自身の気質を見抜くために、例えば学生の方であれば、とにかくたくさんの経験を積む(色々なバイトをやってみる、世界に旅行してみる、学生のうちに起業してみるとか)といったことが重要です。

 

それによって自分はやっぱり公務員向きだなとか、起業したほうがいいなとか、民間の営業がやりたいなということが分かってきます。

こればかりは人に言われてどうにかなることではなく、いくら本を読んだり考えたりしてもダメですね。

自分の身体を通して気づくしかありません。

 

 

以上、ここまで3回に渡って書いてきた「公務員は楽なの?」シリーズですが、仕事と生活はきっちり分離してやっていきたいと考える人にとって公務員は魅力的な職業であることは間違いないかなと思います。

 

一方、AI化によって、公務員もいずれ大きな変化を迫られることになるだろうというのが僕の予想でもあり、だからこそ、旧態依然とした公務員的な仕事のやり方では立ちいかなくなる可能性ががあるということを意見として付け加えておきます。

 

今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!

 

>>公務員の適性(向き・不向き)をまとめた記事はこちらです