障害者雇用水増しと森友問題は根っこが一緒。その原因を元公務員が考える。

こんにちは、元公務員のシュンです!

いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!

 

このブログでも二度にわたって取り上げた障害者雇用率水増し問題(以下リンク参照)ですが、国の調査の結果、中央省庁では3460人を水増しカウントしており、実際の雇用率は2.49%から1.19%へ落ち込むという凄まじいことになってきました。

障害者雇用率を国の省庁が42年間水増し?元公務員として考える裏側。

2018.08.19

障害者雇用率の水増しが地方でも続々発覚。今後数百に増える可能性も?

2018.08.21

 

今回は、10年間県庁に勤めた元公務員として考える、

  • どうしてこういった問題が起こったのか?
  • その裏側に潜む組織文化的な側面は何か?

といった点について、民間企業への出向経験を踏まえた民間と公務員の思考・行動プロセスの違いなどにも触れながら解説をしていきます。

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障害者雇用率の水増しはもう止まらない

以下毎日新聞の記事より引用です。

中央省庁による障害者雇用の水増し問題で、厚生労働省は28日、昨年6月1日時点の国の33行政機関の雇用率の調査結果を公表した。約8割にあたる27機関で計3460人の不適切な算入があった。

(中略)

厚労省の調査では意図的な水増しは明らかになっていないが、毎日新聞の取材に対し、ある省の幹部は「水増しは法定雇用率を満たすためだった。死者を算入した以外にも、強度近視の職員を算入したり、健常者の管理職が(担当者に)自分も障害者に含めるよう指示したりしたケースもあった」と証言した。

引用 2018.8.29 毎日新聞「省幹部「死亡職員を算入」 意図的水増し証言」より

 

最後のほうを読む限り、省庁によってはもう何でもありで数字合わせをやっていたという感じになってますね。

 

都道府県も国と似たような実態があるでしょうし、また、今のところ水増しが発覚しているのは国と都道府県が中心ですが、市町村でも同様の水増しは行われているのは確実です。

厚労省が調査結果をまとめる10月には全国各地のあらゆる自治体で水増しをしていたことが発覚してくると思います。(下手をすれば水増し自治体は1000を超えてくるでしょう)

 

そもそも誰が主導して水増しを始めたのか?

制度発足当時に統一的な内規(口頭伝達)があった線は考えづらい

以前の記事(障害者雇用率を国の省庁が42年間水増し?元公務員として考える裏側。)の中では以下のようなことを書きました。

今回の件について、客観的な判断材料(何かしらのマニュアル)を無しにして、この方は軽度障害者としてカウントしちゃおうねという判断を担当裁量で行っていた(しかも複数省庁で)というのは、元公務員としては違和感を感じます。

(中略)

あくまでこれは完全に僕の想像ですが、制度発足当時に、そういった軽い方も算入に入れてもいいという裏の内規(もしくは口頭伝達)的なものが存在していた可能性があるのではないか?というのを勘ぐってしまいます。

 

しかし、各種報道を見ていると、水増しのやり方がバラバラです。

例えば、雇用率の達成が難しそうなので他の県に聞いて水増しのやり方を真似したとか、うつ病休職者を精神障害者としてカウントしたとか、上記の毎日新聞のニュースでは、幹部が健常者の自分を障害者扱いにしろと指示するとか、雇用率の数字を守るために各組織が色々と考え出して水増しを行っていたようです。

 

つまり、前回の記事で書いたような、ある意味で国家統一的な指示があったというのではなく、まさに各組織(省庁・自治体)の裁量によって各組織ごとに水増しのルールを形成していったと考えるのが妥当のようです。

 

なお、数年以上水増し手法を続けていたところについては、間違いなく担当者異動に伴う引き継ぎがあったでしょうから(拡大解釈で算定するという裁量に基づく手法を引き継ぎ無しで継続するのは不可能です)、組織ごとで見ると独自の内規、引継書的なものが存在していたということになってくるでしょう。

 

また、今回の不正については色々な言い訳(担当者判断で勝手にやったなど)が飛び交っていますが、正直、組織的な関与を否定するというのは無理があります。

少なくとも課長クラスは知っていたはずですから、組織的にそう判断したと解釈するほうが自然です。

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水増しに至った思考や行動のプロセスを考察する

流れとしては森友問題の文書改ざんと全く同じ

今回の水増しに至った思考や行動のプロセスは概ね以下のようなものと考えます。

雇用率は公表されるので、雇用率を守らなければ総理(もしくは各省の大臣)や首長(もしくは各部の部長)が議員やマスコミに叩かれる

→監査的なものは無いので、どうせ裏は取られない

→とにかく軽度の障害でも何でも算入してしまおう、数字を守ることが重要だ

 

これは、森友問題に関連する文書改ざんと概ね流れが同様です。

総理が森友問題に関して答弁をした

→つじつまが合っていない公文書が表に出れば、総理(もしくは大臣)が野党議員やマスコミに叩かれる(叩かれるどころか辞任問題に発展する)

→一刻も早く文章を直そう

 

つまり、上が追求されるおそれに対し、忖度をしながら表に出したらまずいものであればごまかしてしまおうという考え方ですね。

 

今回の障害者雇用の問題については、国なら総理や大臣クラス、自治体なら首長とか部長クラスはかかわっていない(知らない)ケースも多い(そこまで細かく報告はしない)と想定されます。

上に恥をかかせないために忖度をするという公務員の思考(結局のところは、自分のところに火の粉が降りかかるのを防ぎたいというのがあるわけですが)によって行われた一連の行動の結果であるといった風に捉えていいのかなと思います。

 

民間(銀行)との思考・行動プロセスの違い

僕は銀行に出向していたことがあるのですが、トラブルへの対処方法に関して公務員と銀行員で大きな差を感じたことがあります。

 

僕が銀行に行っていた時に何度か大きなトラブルに直面したのですが、その時の上司の対応(出向中2つの担当に所属しましたが、直属の上司2名とも同様の対応でした)は以下のような流れでした。

  • 起きてしまったことは仕方無い、そこに対して今何をすべきかを考えよう
  • 誠心誠意顧客に謝りに行こう
  • その上で原因をきっちり分析し、次回に向けた対応策を徹底しよう

 

対して公務員の組織内ではこうした対応がなされることはあまり記憶になく、以下のようなケースが多かったように思います。

  • なぜ今回の問題が起きたのか、まずは原因を徹底解明しよう
  • 誰が悪くて、誰が悪くなかったのかをきっちり整理しよう(自分たちの落ち度が無いという言い訳もうまく散りばめよう)

さらに言えば、最終的には形式的(かつ煩雑)な対策を作って事務ばかり増えるというのが良くあるパターンです。

 

少し極端な部分もあるかもしれませんが、これが僕が公務員と民間を見て肌で感じた思考の違いです。(もちろん銀行にも公務員的な言い訳思考の方はいました)

 

公務員は、とにかく机上で考えて、行動(失敗を認めて謝るという行動を含む)を後回しにする癖が染み付いてしまっています。

 

今回の件も、達成が出来なければ出来ませんでしたと失敗を認めて謝り、人が集まらないというのならどういう対策が必要かを本気で考えて実行する、それを試した上で本当に難しければ制度を柔軟に運用していく必要があるのではないかということを検討(厚労省に要請)するといったことを早い段階で出来ていれば結果は変わっていたでしょう。

 

しかし、そのように柔軟に軌道修正をしていくというプロセスは公務員は苦手ですから(制度というものがそう簡単には動かせないものであるという前提ももちろんある)、言い訳をしてその場を逃れたい、もしくは今回の不正のように取り繕えるのであればそれで済ませてしまいたいというところがもろに出てしまったということになります。

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とにかく失敗を嫌がる公務員

そもそもどうしてここまで述べてきたような思考と行動になってしまうのかというところですが、「失敗や恥をかくのを極端に嫌がる」という組織体質がかなり大きく影響しているのは間違いありません。

 

公務員は「出来ませんでした」とか、「分かりませんでした」と言うのを本当に嫌がります。

そのため、何をするにつけても、どうでもいい枝葉の部分をきっちり細かくフォローし、時間ばかり浪費する割に本質からどんどんズレていくといったことはしょっちゅうありました。

 

やけに失敗や恥を恐れる体質というのは、公務員は法令を守る立場としてミスを絶対にしてはいけないという強い法令遵守意識から来るのか、マニュアル主義に思考が取り憑かれた弊害なのか、何か失敗すればすぐに議員やマスコミに叩かれる恐怖からなのか、その根本原因は正直10年近く公務員をやっていても良く分かりませんでしたが(おそらくその全てが複雑に絡み合っているのでしょう)、間違いなく組織風土としてはそういう面がありました。

→上がそういう考え方なので、下もそういう考え方になっていきます。

 

忖度の話についても、自分たちのトップが恥をかくのを避けたいという犠牲精神的なもの以上に、最終的にはその火の粉が自分に降りかかってくる(すなわち自分の失敗)ことを防ぎたいという意味合いが強いように思います。

 

おわりに

公務員はマニュアルや規制を作るのは確かに得意ですが、一方、色々なことを想定した上でガチガチの制度を作ってしまうので、やってみてダメなら修正をしていきましょうというのを嫌う傾向にあります。(制度改正手続きが煩雑すぎるという点ももちろんあります)

 

その中で、できた制度は守るしかない、だから不正をやってでもバレなければいい、失敗して恥はかきたくないから・・・といった流れで今回の不正が行われてきたのだと感じます。

 

これは決して障害者雇用だけの話ではなく、行政の仕事全てに通じる問題ですね。

 

少し話が変わりますが、今後日本は圧倒的な人口減少局面に直面し、全く過去に前例の無い状況になっていきます(というか既に足を踏み入れています)。

前例が無いのだから、先にガチガチの制度設計をやって物事を進めるというやり方には無理があり、むしろとにかくやってみながら調整をしていくという柔軟なスタンスが求められます。

 

今回、もちろん水増しをしたのはまずいわけですが、さらに大きな視点から、将来に向けてそもそも行政の仕事のやり方がどうあるべきかということを考えるべき重要な分岐点でもあるように思います。

 

今後、水増しについては何かしらの対策が出来て、一旦は解消されるでしょうが、あくまで対症療法に過ぎませんので、他の施策でも同様の問題が起こる蓋然性は非常に高いです。

 

そうならないためにも、行政の仕事のやり方を構築し直す一つのいい機会ではないかというのを個人的には感じています。

(実際にはなかなか変えられないでしょうけどね。首長の圧倒的に強烈なリーダーシップ(失敗はどんどんして構わない、俺が責任を全て取るからトライアンドエラーでどんどん改善しようといったスタンスなど)が無いと難しいと思います→結局首長は選挙があるのでこれが出来ないわけですが)

 

しかし、若手の公務員であれば、形式ばかりにこだわる公務員体制をぶっ壊して、仕事の大幅な改革を望んでいる人も多いのではないかなぁというのは、実際にそう思っていた僕自身が考えることでもあります。

 

今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!

 

>>障害者雇用率制度などの解説をした最初の記事はこちらです。

障害者雇用率を国の省庁が42年間水増し?元公務員として考える裏側。

2018.08.19

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