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障害者雇用率の水増しが地方でも続々発覚。今後数百に増える可能性も?

こんにちは、元公務員のシュンです!

いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!

 

現在話題になっている、国の障害者雇用率水増し疑惑について、以前以下の記事を書きました。

 

記事の中で、「各自治体においても調査がされると思われるので行方に注目したい」といったことを書きましたが、結果的に、いくつかの県でも国と同様に水増しをしていたという話が出てきています。

 

以下では、各県の水増しについて書かれた各紙の最新記事を取り上げつつ、今後この水増しは拡大していくのかについての予想、また、前回の記事でも触れたのですが、どうしてこういった不正が行われたのかという点について元公務員という立場を踏まえて改めて書いてみたいと思います。




各県でも障害者雇用率の水増しが発覚

以下、時事通信社の記事引用です。

愛媛県は20日、障害者の把握方法に関する厚生労働省のガイドラインを拡大解釈し、県職員の障害者雇用率を本来より多く算出していたと発表した。少なくとも15年前から常態化していたという。山形県も同日、障害者雇用率を高く算定していたと発表。障害者雇用が義務付けられた1976年から確認が不十分だったとしている。
中央省庁で障害者雇用の実績を水増ししていた疑いが浮上したことを受け、独自に調査した結果、不適切な対応が発覚した。
厚労省のガイドラインは、身体障害者について身体障害者手帳で確認するよう規定。例外として、障害程度の等級を記した指定医や産業医の診断書・意見書での把握も認めている。
愛媛県は、けがなどで長期休暇を取得する際に提出する診断書を基にした独自の認定も併用していた。2018年の県庁知事部局の障害者雇用率は2.57%だったが、問題の認定分を差し引くと1.30%となる(法定雇用率は2.5%)。
山形県では18年7月に厚労省に報告した障害者の職員122人のうち、69人が障害者手帳を持っていない上、県の指定医や産業医の診断書などによる確認もしていなかった。県は6月時点の知事部局の障害者雇用率を2.57%と報告したが、手帳未所持者分を差し引くと1.27%となる。
高知県も手帳保持者に近い障害があると所属長が判断した職員を独自に認定していたが、手帳を持たない可能性のある職員を差し引いても、17年度の法定雇用率(2.3%)はクリアしているとした。

引用(赤字・太線は筆者加工):2018.8.21 時事ドットコムニュース「愛媛、山形県も水増し=障害者雇用、国指針に従わず

 

中央省庁の水増し内容と同様、厚労省のガイドラインの例外規定(記事内赤字部分。原則は手帳所持)を拡大解釈し、不正に雇用者数の水増し算定をしていたということになります。

 

東京新聞の記事によれば、これ以外にも秋田、千葉、島根、長崎、また最新の記事では静岡も水増しを行っていたことが明らかになっています。

 

間違いなく他の県および全国の市町村に広がっていく

今のところ水増しが発覚したのは数県だけですが、この数はさらに増えるでしょうし、また、各市町村においても多くのところ(数百レベル?)が同様の水増しを行っていたとなってくるのはほぼ間違いないと考えます。

 

民間の模範となるべく、高い法定雇用率(民間2.2%に対し2.5%)を設定しておきながら、本来は1%台前半に過ぎないようなところが全国で続出してくるとなれば、雇用義務のある民間企業からの一層の反発や行政不信は避けられないでしょう。

(しかも、国や地方自治体は公表されるだけで、民間に課せられるような行政指導や納付金といった制度も無いわけです。もちろん、公表されれば、公的機関なのに守っていないのか?と言われるプレッシャーがあるというのはあるでしょうが、それはそれです。)




一体なぜこういった不正が全国でなされていたのか?

前回の記事(障害者雇用率を国の省庁が42年間水増し?元公務員として考える裏側)の中で、公務員の特性(マニュアル主義・前例踏襲主義)を踏まえ、例えば制度発足時などに、省庁の間で申し合わせ事項(内規的なもの、もしくは口頭伝達)があって、そこで軽度の方を算入することを良しとしていたのではないかという仮説を立てたのですが、このように全国各地に不正が広がってくると、真相が分からないですね。

 

また、山形県の水増しについて書かれた毎日新聞のニュースでは山形県人事課が以下のようなことを言っています。

県人事課などは、身体障害者手帳を持たない69人について、「職員による不手際で長年、確認を怠ってきた」と説明した。障害者雇用が義務化された1976年以降の40年以上にわたり、正しい確認作業をしていなかったという。

引用:2018.8.20 毎日新聞「障害者雇用 山形県も確認せず算入 69人が手帳持たず

 

しかし、単なる職員の不手際だという理由は若干懐疑的です。

元公務員としての視点から言わせてもらえば、こういった公的な統計調査においては、ある程度明確なマニュアルに基づいてキッチリ算定するのが公務員の特徴だからです。(だからこそ何か内規的なものがあったと想定したわけです)

また、何かしらの根拠が無いと、公務員は頻繁に人事異動があるために後任に引き継ぎが出来ないということになります。

 

山形県の言うように、この人はとりあえず算定しちゃおうといった曖昧な判断が、担当者レベルのみで40数年もの間続けられてきたというのは考えづらいというのが元公務員として率直に思う点ですね。

(もしくは僕がいた県庁がクソ真面目だっただけなのか・・・。でも本来そうあるべきですし、今回のような独自裁量の不正はあり得ないですよね)

 

おわりに

記事内で書いた通り、今後さらに全国の自治体(下手したら数百とか)でどんどんこの不正が発覚していくと思います。

 

今回のような、特にチェックされることも無いから適当にやっちゃおうみたいな考えは、信用面から考えて本当にまずいと思いますし、他のあらゆる施策も疑われてしまうような、非常に根の深い話だと思います。

 

先ほども書きましたが、単に職員の事務手続きが間違ってましたというのではなく、そもそもそういった不正がスタートした段階でどのようなやり取りがあったのかというのを明らかにしていく必要があると考えます。

制度発足当初から、各省庁や自治体の裁量で誤った算定を続けるというのは考えづらい話ですから、最初の段階で組織的な動きがあった可能性も想定されます。(40数年前の話となると、もう誰も知り得ないのかもしれませんが)

 

今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!

 

>>障害者雇用率制度の詳細などについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

POSTED COMMENT

  1. 見尾田 聡 より:

    若い世代ばかりに目を向けて、40歳代の採用が全くないような現状に理解が出来ない事があります。
    氷河期と呼ばれてきた世代の障がい者は、外されて、今、30歳代までの採用が増えて来ています。
    今頃、このような水増し問題がさらされていても、昭和43年以降という名目だけで、実際には、30歳代を採用し、40歳代は、必要とされない問題にもっと雇用に目を向けるべきだと思います。

    • シュン より:

      貴重なコメントをありがとうございます。

      おっしゃるご指摘は障がい者の方の採用に限らず、日本全体の雇用について言えることなのだろうと思います。

      僕自身は、何歳であろうと優秀な人が活躍をすればいいという考え方を持っているため、見尾田さまのコメントには非常に共感する部分があります。

      一方で、日本の構造的な仕組みは何を言っても変えられないというのが実態です。(結局人を変えることはできず、自分を変えることしかできない)

      それこそ現在はインターネットを使えばいくらでも個人が活躍できる時代ですし、起業を含め、年齢に限らずどんな方にとっても大きな可能性のある環境ではないかなとも思います。

      40歳代の方は、人口も多く競争に揉まれていたため、仕事という点で言えば凄く高い能力をお持ちの方ばかりです。
      その力を存分に発揮すれば、相当に面白いことができると思いますし、個人的にはそういった方たちがどんどんご活躍されることを願っております。
      (なんかまとまりのない終わり方ですいません・・・)