こんにちは、シュンです!
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今回は、東京医科大の入試で女子の点数の不正操作があった件に関連して、
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といった点について、公開されている統計データを踏まえながら書いて行きます。
公務員試験における女性の減点はあり得るのか?
無いとは思うが、絶対あり得ないとは言えない
もちろん、今回の東京医科大のような調整行為があるかと聞かれたとすれば、全ての団体があり得ないと回答するでしょうが(また、後述しますが、統計上は差別が無さそうなデータが出ています)、実際問題として全ての公務員組織で絶対にあり得ないかと言われれば、それは分からないというのが結論になります。
その理由について細かく解説をしていきますと、
まず、筆記(択一)試験においては基本的に得点操作はあり得ません。
というのも、択一の点数は情報開示が出来ますので、調整をしたらバレてしまいます。(ただ、地方公務員の試験問題は回収されちゃうんですけどね・・・。国家公務員は回収されませんが。)
しかし、小論文と面接については、こちらも点数の情報開示はできるものの、そもそも得点の付け方が曖昧なので、何をされても分からない(反論しようがない)ということがあります。
例えば、東京医科大では小論文において点数操作がなされていたとのことですが、同様のやり方をするところがもしあった場合、それは内部告発でもない限り分かりようがないということになります。
ということで、あり得るかあり得ないかと言われれば、あり得ないとは言えないというのが結論になりますが、一方、女性の申込率と合格率(採用率)を示すきちんとした統計データがあります。
具体的な統計データで女性の合格率を見る
国家公務員・地方公務員ともに、男女の試験申込者数と採用者の割合が分かる統計があります。
地方公務員の場合は、一つ一つの自治体がどうなのかと言われるとそこまでは分からないのですが、全体の傾向として女性の点数操作疑惑がありそうか否かというのは、これを見れば分かります。
国家公務員の女性採用者に関する統計
年度 | 女性申込者割合 | 女性合格者割合 | 女性採用者割合 |
H29 | 35.1% | 25.8% | 32.6% |
H28 | 33.6% | 25.2% | 34.5% |
H27 | 32.8% | 22.7% | 33.5% |
H26 | 30.8% | 21.2% | 34.4% |
H25 | 30.3% | 19.6% | 24.4% |
H24 | 30.6% | 22.4% | 25.5% |
H23 | 31.1% | 19.7% | 25.3% |
H22 | 30.5% | 20.7% | 24.6% |
H21 | 31.1% | 20.1% | 20.7% |
H20 | 30.5% | 19.2% | 25.5% |
人事院:平成29年度年次報告書「国家I種・総合職試験の申込者・合格者・採用者に占める女性の割合の推移」より引用
まず、国家公務員(総合職)の女性採用者に関する統計です。
申込者に対して合格者の割合が少ないという事実は気になると言えば気になりますが、H26年以降、女性の採用者割合は、申込者割合とほぼ同等の数字になっています。
(合格者と採用者が異なっているのは、国家公務員の場合、試験に合格をしてもその後官庁訪問をして各省庁の面接を突破しなければ採用されないためです。この統計によれば、男性は試験合格者の割合は高いものの、採用段階になると女性に負けているという形になりますね)
正直、H20~H25あたりの数字は若干のきな臭さを感じないわけでも無いですが、少なくともここ5年間は男女の調整的なものは感じられないということになります。
地方公務員の女性採用者に関する統計
年度 | 女性受験者割合 | 女性合格者割合 |
H28 | 33.3% | 42.1% |
H27 | 32.9% | 41.0% |
H26 | 31.1% | 39.2% |
H25 | 30.1% | 38.6% |
H24 | 30.3% | 38.4% |
総務省:平成28年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果より引用
次に地方公務員の女性採用者に関する統計です。
こちらはシンプルに、過去5年間全てにおいて女性の受験者割合より女性の合格者割合が大きいです。(こちらは国家公務員と異なり、合格者=採用者と考えて良いです)
なお、記載はしませんでしたが、都道府県・市区・町村ごとに細かく見た場合であっても、上表と同様、過去5年全てにおいて女性の受験者割合よりも女性の合格者割合が大きくなっています。
よって、各団体区分ごとに見た場合でも、得点調整らしきものが行われているとは思えない結果になっていると言えます。
(ちなみに、都道府県の場合は合格者割合と受験者割合の差が2~3%程度ですが、市区町村の場合は10%程度あります。つまり市区町村はかなり積極的に女性を採用しているということになります)
女性管理職の割合について
管理職になると一気に女性は減る
次に、仕事をし始めてからの性差という観点から、女性の管理職の割合(H29年)を民間企業も含めてまとめてみました。
種別 | 職員全体の女性割合 | 課室長相当職以上の女性割合 |
国家公務員 | 18.6% | 4.4% |
地方公務員(都道府県) | 38.8% | 9.0% |
地方公務員(指定都市) | 32.3% | 13.5% |
地方公務員(市区町村) | 40.8% | 14.1% |
民間企業 | 43.8% | 部長級6.3% 課長級10.9% |
内閣府「男女共同参画白書 平成30年版」、内閣官房「女性国家公務員の登用状況及び国家公務員の育児休業等の取得状況 のフォローアップ」、総務省「平成25年地方公務員給与実態調査(男女別職員数)」を活用して算出
以上の通り、公務員・民間企業ともに、職員全体に占める女性の割合に比べ、管理職に占める女性の割合が大幅に低いことが分かります。
世界各国と比べても日本の女性管理職割合はかなり低い
以下、ILO(国際労働機関)が2015年に出した各国の女性管理職割合から、G7各国の女性管理職割合を抜粋したものです。
国名(使用した統計年)順位 | 管理職比率 |
アメリカ(2008)15位 | 42.7% |
フランス(2012)24位 | 39.4% |
カナダ(2012)36位 | 36.2% |
イギリス(2012)41位 | 34.2% |
ドイツ(2012)55位 | 31.1% |
イタリア(2012)70位 | 25.8% |
日本(2012)96位 | 11.1% |
日本の管理職比率の圧倒的な低さが分かりますね。
問題になった東京医科大の話に関して、確かに入口の部分(入試段階)で差別をするのはまずいという議論は分かるのですが、本質的なところとして、入口以降においても、日本における男女差というのがこのような状況にあるという点は押さえておく必要があると思います。
まとめ
- 公務員における試験段階での女性差別というのは、統計的に見れば無さそうだと言ってもいい
- 地方公務員(特に市区町村)の場合、むしろ女性優位(=申込者の女性比率より採用者の女性比率のほうが大きい)
- 一方、働き始めてからの視点で見ると、管理職になる女性割合は公務員・民間ともに非常に低く、諸外国と比べてもその低さが目立つ
以上です。
東京医科大が得点調整を行った理由として、女性医師が結婚や出産で離職すれば、系列病院の医師が不足する恐れがあったり、緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科で女性医師は敬遠されがちだからというものが、関係者などの話で挙がっているようです。
これに対して、世間では男女から賛否両論の意見があったりするようですが、そもそも医師という特殊環境だから良いとか悪いとかいう話以前に、日本全体として女性の労働環境が遅れているという点はよく見つめる必要があるかなと思います。
つまり、本質を辿ると、根本的な思想では東京医科大の話と似たような意識を持っているのが日本の社会システムであると言えるでしょう。
一方で、facebook、LINE、メルカリなどもそうですが、女性主体のサービスを提供する企業が21世紀になって大きく台頭してきている中、日本の男性的な社会システム(階層型システム)をベースにした企業は今後あまり大きな付加価値を生み出さなくなっていく可能性も高いです。(消費の中心は女性であるため、それは必然でもあります)
この記事を見ていらっしゃる方が公務員志望の方であれば恐縮ですが、あえてこうした古い男性的な仕組みの中で人生設計をしていくよりも、新たに台頭する女性型の社会システムの中で自分を活かしていく選択肢(起業を含め)も考えられるのではないか、というのは今回の記事を書いていて個人的に感じたことでもあります。
(一方、記事下にリンクを貼りますが、公務員の女性の場合、あくまで男性的な階層システムを前提としつつも、既存の多くの民間企業に比べればかなり条件面で恵まれているという部分は確かにあります)
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
>>公務員のメリット・デメリット(特に女性の場合は育児面のメリットについて)気になる方はこちらの記事もご覧ください。