こんにちは、元公務員のシュンです!
いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!
今回は「公務員のやりがい」がテーマです。
公務員の仕事についてよく言われるのが「民間が利益にならないから取り組まないことであっても、多数の住民の満足のために取り組む」といったことです。
しかし、実際に仕事をしてみると、そういう理想論っぽい観点からやりがいを感じることは少なかった(というかほぼ無かった)です。
それでは公務員のやりがいとは何なのか?
以下では、県庁時代に周りの人を見ていて感じたやりがいや、元公務員である僕自身が感じていた本音など、できるだけリアルな話を書いていきたいと思います。
特に、これから公務員を目指す方にはぜひご覧になっていただければと思います。
公務員の仕事にやりがいを感じていた人はこんな人
以下では、僕が客観的に職員の方たちを見ていて、こういうところにやりがいを感じているんだろうなぁと思ったことについて書いていきます。
自分たちの規制で世の中の枠組みが守られていると感じる人
飲食店の営業許可や、介護施設への立入検査など、様々な事業者の規制などは行政が行う役割です。
適正な監視や規制を行うことで、世の中で不正や利用者への不利益などが無いようにしているんだ!と思っている人はそれなりにいたように思います。
あとは、あんまり性格がよろしいとは思えませんが、上から目線で事業者に指導できる立場であることに喜びを感じていた人も少なからずいました。
ただ、そもそもとして、こんなのやって意味あるのかよ?というどうでもいい規制が多すぎるとは思います。
橋や道路などの公共物を作っている人
橋や道路など、民間が作っても全く利益にならないものを作るのは行政の役割です。
このように長く人の役に立つ「作品」を作ることにやりがいを感じる方もいます。
特に、土木職や建築職の人などに、そういった「ものづくり」に誇りを持っている人が多かったです。
行政職の場合、例えば制度をつくることも一種のものづくりでしょうが、結局は3~4年で全然関係ない部署に異動したりするので、土木職などの技師さんたちに比べて思い入れが少ない傾向が多いですね。
(技師も3~4年で異動しますが、例えば土木事務所間での異動とか、自分の専門分野の部署を周るのがほとんどです)
無い物ねだりなのかもしれませんが、一つのことを極められるという意味で、僕は正直このタイプの人たちが羨ましかったですね。
大きなお金を動かすことに喜びを感じる人
企業への補助金、社会保障の事業などであれば、担当者として億以上を管理するような案件は珍しくありません。
大きなお金を握って影響を与えていること、また、大きな金額の新規事業を立ち上げることにやり甲斐を感じている方もいたように思います。
僕は金額より中身派なので、借金経営なんだから、どんどん事業潰して必要最小限のことを、しかも低い金額でやるのが筋だろうと思ってました。
似たような事業があるのに新規事業をぶち上げてくる人の思考は信じられませんでしたね。
予算の担当が長い(保健福祉部局で3年、銀行2年、最後は財政当局)ので、どうしてもそういう思考になってしまいがちなのですが、でも、それは辞めた今でも変わらないです。
私の事業が人の命を救っているんだと思っている人
これは、県では保健師さんに多かったと思います。
知らない方もいらっしゃると思いますが、保健師というのは看護師の上位資格です。
直接的に人の看護をするよりも、その前提となる医療や介護などの様々な仕組みをより良いものにしていきたいという視点から保健師を選んでいる人も多いです。
なので、保健師さんには結構熱い人が多いです。
そして、キツい人も多い(笑)
行政職から見ると、少し視野が狭いなと感じることもあったりするのですが、行政職には高説だけ垂れて偉そうに評論するだけの人が多いのに比べて、保健師さんたちはとにかく動きます。
のめり込んで仕事をしている彼女たちはカッコ良かったなぁと思います。
僕自身は仕事にやりがいが無かったから辞めました
次に僕の話をしていきます。
僕は全くやりがいを感じませんでした(笑)
辞めてるんですから当然そうですよね。
やりがい0とは言いませんが、限りなく0に近かったです。
こればかりは、僕の価値観と組織の価値観のうち、僕の中で譲れない部分が完全にズレていたとしか言いようがありません。
ありがたいことに、いわゆる花形ポジションをずっと経験させていただいたので、組織の裏側や権力構造、トップの意思決定の仕方など公務員の様々な面を見ることができましたが、それでも(だからこそ?)全く喜びややりがいを感じることはできませんでした。
このまま組織にいれば、生涯に渡って自分自身に嘘をつき続けることになると思いましたので、環境を変えることにしました。
仕事は手を抜いたつもりはありませんが、目をかけてくださった上司の方や人事の方たちには未だに申し訳ない気持ちがあります・・・。
僕のようにならないためにも、自分の大切にしている価値観と組織の価値観との相性を見極めることは重要です。
かの経営の神様ドラッカーも自分の価値観に従って、成功していた投資銀行の職を辞めています。
そして、その行動は正しかった、優先すべきは価値観であると後々評価しています。
ちなみにですが、妻に仕事のやりがいを聞いたところ、「給料を貰える時」と、「金曜に、今週も仕事を頑張ったなーと思って一杯あおる時」らしいです。
いや、それ仕事のやりがいじゃないじゃんっていう(笑)
でも結構皆そんなもんだったりします。
心底仕事が好きだという人はほとんどいませんが、みなさんそれなりに折り合いをつけてやっています。
実際、それで日々平和に生きていくことに幸せを感じる人はたくさんいますし、正直食うことには困りませんから、それはそれで素晴らしいことだと思います。(致命的な価値観のズレがなければこの選択肢は取り得ます)
僕が公務員の仕事にやりがいを感じなかった理由
徹底した前例踏襲主義と理屈合わせの不毛な作業
何か一つ新たなことをやるにつけ、過去の前例、他県の状況を気に「しすぎ」ます。
いざ新たな事業を予算化したいとなれば、財政課の幹部に事業を認めてもらうために、財政課の担当者と部局担当者が一緒になって、色んな資料を準備する必要があります。(その上で、財政課の担当者が財政課の幹部に説明をします)
その際、幹部たちは過去の前例や他県の先例を事業実施の条件として持ち出すことが非常に多いため、全く新しいことをやろうとする場合のハードルがめちゃくちゃ高いわけです。
高度経済成長期ならともかく、人口減少局面のこの時代において、他と横並びでは衰退していくのは明らかです。
そういう状況なのに、そもそもとして新たなことが認められづらい仕組みになっています。(仮に低予算であっても新規事業は凄く細かく見られます)
とはいえ、各部局が提案する新規事業の内容も、似たような既存事業を延命させたままで微妙に異なる事業を提案したり、明らかに効果の無い単なる啓発イベントみたいなものを提案したりと、ぶっちゃけどうしようもない案件が多いというのも実情です。
→財政当局が厳しいので、新規事業は数打ちゃ当たるみたいな思考になってしまっている事業担当者が多く、これが最も危険で不毛なサイクルだと思っていました。
そういう場合、全く中身が無いにもかかわらず、あたかも必要性があるもののように時間をかけて担当者が資料を練り上げたりするわけです。
(財政課の担当者も、上に説明を通すために理屈づくりのためだけの資料作成指示を出したりします)
そして、そのために皆が遅くまで残業したりしています。
このように、とにかくやっていることが不毛で全く意味が感じられないことが多かったです。
はっきり言えば、日々の仕事に時間の浪費を感じていました。
お役に立っている実感が全く無い
市役所なら市民に近いので、直接住民のお役に立っているということを感じやすいのかもしれませんが(ただ、妻は感謝されたことは一度も無いし、役に立っているとかもほとんど感じたことがないとのことです(笑))、県はあまりにも住民から遠いです。
県の補助金を市町村が活用することで最終的には誰かの役に立っているとか、事業所を支援することでその事業所がお客様の役に立っているとか、間接的な支援が多い。
そうすると、人のお役に立っているという実感が全然得られないわけです。
しかも、僕は内部管理的な仕事が多かったので、このことを強く感じていました。
また、幹部になればなるほど、内部管理や対議員との折衝が多くなり、なおさら住民が遠くなることは分かっていましたので、将来的な魅力もやはり感じませんでした。
言い回しや形式にこだわりすぎる
公務員は、文章の言い回しや形式に異様なほどこだわります。
その最たるものは議会なのですが、こういった事業をやったらどうかという議員の質問に対し、「検討します」だと前向きだとか、「努めて参ります」だと何もやらないとか、とにかくつまらないルールがあります。
「正直財政に余裕が無いので、そんなになんでもかんでも出来ません、先生のおっしゃる政策ははっきり言って優先順位が低いと考えられるので検討の余地は無いです。」
と、ハッキリ言えばいいのですが、それは絶対に言いません(笑)
相手に恥をかかせないようにとか、それでもここまで言ったら次回やらざるを得ないからとか、とにかく本質的でない議論が繰り広げられることになります。
こういった調整に時間を多く使うというのは、非常に非生産的だと感じていました。
おわりに
この人は強いやりがいがあるんだろうなという人は行政職よりも技術職に多かった気がします。
異動もある程度似たようなところを周りますし、専門性も非常に高いですから、自分の仕事に誇りを持っている方が多かったです。
行政職の場合、人と人との力学みたいなところに楽しみややりがいを感じている人が多かったですね。
議員とか各部長、各課長の関係性に詳しかったり、誰に話を通せばこうなるといったことを嬉々として語るような感じの方はそれなりにいました。
一方、その事業が本質的に意味があるのかとか役に立つのかといったことを追求する人は、嫌になる場面が多いように思います。
最後に、これから公務員を目指す方に一言言っておくとすれば、採用試験案内に書いてあるやりがいはあくまで綺麗事ですから当てにしないほうがいいです。
リアルはもっとドロドロとしています(笑)
役所のリアルについて知りたければ、役所の人とどうにかして知り合いになって、直接お酒でも飲みながら聞くのが圧倒的にオススメです。
多分、若い人と喋りたがっている人は多いので喜んで語ってくれると思いますよ。
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
>>公務員の適性(向き・不向き)をまとめた記事はこちらです