書評

伝説の棋士・升田幸三の名言。羽生善治も憧れる男が語る成功哲学。

こんにちは、元公務員ブロガーのシュンです!

いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!

 

今回は、羽生善治が憧れ、ホンダの本田宗一郎氏が講演でネタにするなど、将棋界のカリスマ的存在である元名人・升田幸三の言葉を彼の著作から取り上げます。

本記事の内容

  • 伝説的棋士・升田幸三の凄さ
  • 著書「勝負」における名言

本書は将棋の本ではなく、彼が将棋やその交遊を通して学んだ人生哲学・成功哲学的を著したものです。

超一流の方は似たような考え方を持っているケースが多いですが、升田名人ももちろん同様です。

人生をより良くしていきたいとか、ビジネスで成功したいとか思っている方には間違いなく参考になる言葉が散りばめられた一冊です。




伝説的棋士・升田幸三の凄さ

升田幸三と言っても、将棋に詳しくない方であれば知らない方が大半だと思いますので、どんな人物なのかを簡単に解説します。

 

升田名人(1957年に名人獲得)で、先日羽生善治さんが最多勝記録を塗り替えた大山康晴名人のライバルとしても有名です。

 

ただ、稀代の名人として数々の記録を持つ大山氏に比べると、正直なところ数字の上での升田名人の成績は圧倒的に劣ります。(もちろんそれでも凄いのですが、大山名人が凄すぎる)

 

しかし、

  • 「新手一生」を座右の銘として生涯新しいやり方にこだわる
  • 発言内容は既存の権威に楯突くような歯に衣着せぬものが多い
  • 勝負師然とした風貌

などが相まって、記録以上に記憶に残る将棋界の伝説的存在です。

 

ちなみに、羽生善治さんは過去にタイトルを全て制覇する7冠王というのを取っています。

その際、羽生さんと最後の7冠目を争ったのが谷川浩司九段(当時王将、元将棋連盟会長)なのですが、この二人の天才に密着したテレビ番組の中で、二人とも対戦したい棋士として挙げたのが升田名人です。

 

また冒頭で少し触れましたが、本田宗一郎さんがソニーでおこなった講演の中で、升田名人が本田氏に語った「歩の話」を取り上げていたりもします。

(1分くらいの動画ですので興味があれば見てみてくだい)

 

そんな、各分野の天才たちを惹きつけてやまない升田名人ですが、自身の著作を何冊か残しており、その中で人生哲学を語っています。

今回は著作の一つ「勝負」から名言を取り上げていきます。

 

升田氏の著作「勝負」における名言

自信の圧倒的重要性

小さいときからえらくなる子だ、えらくなる子だと聞かされて育った。

おかげでその後、どんな苦境でも、妙に自信だけは失いませんでしたね。

一種の暗示ですが、この話、子をもつひとには役に立つんじゃないかと思いますよ。

P11

 

世の中で大成功をしている人は必ず自信を持っています。

それはだいたいが根拠なき自信です。

 

どんな物事も、トライアンドエラーを繰り返すことでしか成功はできません。

つまり、失敗が絶対について回ります。

 

しかし、失敗が続くというのは精神的になかなか辛いものがあります。

だから途中でやめてしまったり、無難なやり方に落ち着いてしまったりするケースが多いのですが、これを乗り越える際に必要なのが、「俺はできる」という根拠なき自信です。

 

升田名人はその根源を自身が受けた教育に挙げ、その重要性を説いています。

 

また、自分が受ける教育というのはなかなかコントロールできないものですが、普段から自己暗示をして自分で自信を養う重要性についても以下のように触れています。

たとえば自己暗示というのは、成功する人と不成功に終わる人との関係じゃないかと思ってるんです。

不成功に終わる人というのは、自己に無意識のうちに自信喪失させるような暗示をかけている。おれはもうダメだとか、終わりだとか、始終ボヤいたりして、自分を奈落の底に落ち込ませるような自己暗示をね。

逆に、伸びる人というのは、いつも自分を向上させるような暗示をかけてますよ。

P69

 

脳科学的にいえば、脳が自分の見たいものを見ようとする働き(スコトーマ)があることに関連した話ですね。

 

自信喪失するような暗示をかけていれば、そういうものしか見えなくなる。

逆も然りということです。

 

自分で自分を卑下するのは、百害あって一利なしということですね。

 

大局観について

ヘタはどうしても、局部の利益にとらわれがちになる。

これがつまり、碁といわず、将棋といわず、人生においても、いわゆる弱者の考え方というものなんです。

(中略)

つまり全体利益を忘れて、部分だけにとらわれるんだな。

P62

まさに木を見て森を見ずでは結果が出ないということですね。

 

しかし、全体は意識しないと見えないものです。

 

例えば仕事であれば、今やっている目の前の仕事が会社全体の利益からするとどこに位置付けられるものなのかを認識する。

何十年勤務していても全体が見えない人はたくさんいるものですが、それはこういった工夫をおこなっていないためです。

 

一方、特に何かに取り組んで初期の頃は、全体像を見ようと思っても見えない、また、それにあまり意味がないこともあります。

 

局所に必死に取り組むからこそ全体が見えるようになります。

部分→全体→部分→全体の繰り返しを意識することが大切です。




「勝負」とは?

勝負というのは、よく読んで、たとえば事故の起きそうな点をシラミつぶしに検討しておいて、これなら間違いないという底辺をつくっておいてから、手をくだす。

これが勝負なんですね。

P102

人には勝負人間とバクチ人間がおり、勝負人間はこのように慎重な手順(慎重と言ってもスピードが遅いという意味ではなく、判断に当たってきちんとしたプロセスを積むということ)を踏んで判断をするのに比べ、バクチ人間はより偶然性に依存すると升田名人は語ります。

 

もちろん100%の物事などこの世にありません。

しかし、100に少しでも近づけるために手をうつ。

50%ではまず勝負をしないし、まして20%とか10%の勝負などはあり得ないということです。(そういう意味では宝くじを買う勝負師というのはこの世に存在しないですね)

 

例えばソフトバンクの孫社長も、新たなことをやる際には徹底的にシミュレーションをし、勝率7割くらいと思ったら参入すべしという話を著書で語っています。

これもバクチと違う「勝負」の好例でしょう。

 

また、僕は投資にも興味があるので、本当に稼いでいる人たちとそうでない多数の人たちを良く見てきたのですが、

前者はとにかく半端じゃないほど徹底的に分析をして勝つ確率を上げていくのに対し、

後者は勝っている人間を常に真似しようと情報を追い続ける(ましてやその情報が外れたら逆ギレする→自己責任の考えがない)、もしくは単に上がっていて勢いのある銘柄を買おうとする

といった特徴があります。

 

どちらにせよ、勝っている人は、升田氏の言うようにあらゆるケースを分析した上で、確率を高めてから投資をしています。

確率を6割〜7割に上げていくことができれば、例えば元手100万円のところを10万円ずつ投資していけば長期で見れば確実に資産が増えていきます。(また3〜4割の負けも前提なので、負けの時はいつまでも引っ張らずさっさと損を確定させます)

 

将棋もビジネスも投資も、超一流の方は「確率」に対する認識が共通しているという点は押さえておいて損はありません。

(逆に言えば、常に100%勝つことを狙っている人は、どんな世界でも成功できないと言っていいでしょう。そもそもそんなことは不可能だからです)

 

一つを極めよ

将棋自体の若いとき、過程として、どの構えならだれがきても大丈夫といったような専門をひとつ、克服しておくことが必要ですね。

どれもこれもひと通り知ってるというだけでは、天下はとれない。

P88

 

世の中で成功している人を見ていると、だいたい何をやってもうまくいくケースが多いです。

例えば、最初にブログで成功し、次にツイッターで成功し、次にYouTubeで成功するなどです。

逆に、失敗する人は何をやっても失敗するケースが多い。

 

この大きな要因として、中途半端に色々とかじっているか、一つのことをしっかり極めてから他のものに取り組むかの違いが挙げられます。

 

物事の成功の秘訣は、正しいやり方を師や成功者に学ぶ(真似をする)、徹底して一つに絞る、など共通しています。

一方で、一つを中途半端にやる人は、そうした要諦がつかめないため、永遠に中途半端をやり続けるということになります。

 

大きな成果を出したいならまずは一つを極める(例えば、「営業」「財務」「ブログ」「YouTube」「転売」など)べしというのは非常に重要な考えです。

→ただ、まるで自分の肌に合わない分野を極めるなど無理です。この辺は難しいところなのですが、3ヶ月嫌にならず継続できるかどうかがその分野を見極める際の参考になります。

 

また、升田名人は以下のようにも語っています。

一道に秀でてくると、ほかの分野のことも理解するレベルがあがってくるもんですよ。たとえば絵で、ある境地に達した人、ないしは書家、大工、そのほか何でもいい、とにかく秀でた人は、専門以外のことでも、直感でわかってくるようになる。

P124

一つを極めると他の分野での学びがより早くなる、結果的に様々な分野のことを高いレベルで身につけることができ、まさに巨人に成長しうるということがこの言葉から分かります。

 

最後の境地は「遊び」

幼いとき、めし食うのも忘れて遊びに夢中になりますが、ありゃ楽しくて楽しくてしようがないからだ。そこへ還るということですな。凡から出て凡にかえる、これが最高だと思う。

P139

これも超一流の人は同じようなことを語りますね。

究極的に、無我夢中でそのことにハマるというのが最終的な境地だということです。

 

一点補足をしておくと、自分が本当にやりたいことでない限り、この境地には達し得ないだろうということです。

例えば棋士であれば、理論はよくわからずとも将棋が楽しく夢中になって上達し→勝つために色々と研究するようになり→再度夢中の領域へ還っていく。

最初の段階で夢中になれないものであれば、例え研究や勉強によって一定の上達をしても超一流の領域には達することはできないでしょう。

 

先ほど一つを極めるという話を書きましたが、その前提条件として、無我夢中になれるほど本気でやりたいことをやるというのは非常に大切な点だと思います。




スランプ脱出法

つらいからよけい、安易に楽しよう楽しようということになるが、そうなるとかえって脱却できないのがスランプだ。

ところが、これじゃいかん、よし、苦労に直面してそのなかに自分を没入させてやろう、そう決心したとき、実はスランプから脱却できる光明が、すでに差してきているときといっていい。

これは私の長い経験からいうんですが、たとえば好きなタバコを断つとか、対局中に相手の二倍ほど呼んでみようとか、そこへ性根がすわったときが、もう正常に復調したときです。

P163〜164

升田氏は、調子が悪いからと色々小手先のテクニックに走ったり、息抜きで海や山にでも行ってみようとしたりするのは嘘だと言っています。

 

辛い時だからこそ、覚悟を決めてそこに飛び込むこと、逃げないこと。

 

まさに言われてみるとそうかなという感じがしますが、そう簡単にそれができないのが人間です。

 

時には息抜きも必要でしょうし、個人的にはそれが悪いことだとは思いません。

ただ、最後には升田名人が語るようなやり方でしかスランプは抜けられないという知恵を知っておくことは非常に役立つと思います。

 

分からなければ素直に聞くべし

相談にゆくと怒られるんじゃあるまいか、おれの格が下がるんじゃあるまいかと。

(中略)

不案内のことは、たとえはなたらしとる三歳の児童にも、どっちへ行けばいいか、聞いて恥ずかしいことはないと思うんだ。

P193

名経営者などの特徴としてよく挙げられるものに、年齢関係なく、どんなに若手の意見でも積極的に聞くというものがあります。

 

日本は恥の文化だと言われますが、それが影響してか、自分の格が下がるから聞かないという人は非常に多いと感じます。

(県庁時代も感じましたし、県庁時代に出向していた銀行でも感じました)

 

もちろん、聞かずに自分で調べることも可能ですが、人は自尊心を満たしたがる生き物です。

つまり人に聞くというのは、自分が学べるだけでなく、相手から信頼を勝ち取る手段でもあるのです。

 

素直に聞いて感謝をすると、あの人は地位も年齢も高いのに本当に素晴らしい、ついて行きたいと思うのが人です。

 

なかなか簡単なことではないと思いますが、リーダーとなる存在であればぜひ押さえておいて積極的に実践したい点ですね。

 

おわりに

以上、僕のほうで「これは!」と思った升田幸三の言葉をまとめてみました。

 

自分を高めたいと思っている方には非常に役立つ言葉ばかりだと思いますので、実践できるものから習慣化していくことをおすすめします。

→自己暗示などは最初のステップとして非常に重要だと思います。以下の記事ではそのやり方の一例を取り上げているので、興味があれば参考にしてみてください。

 

なお、今回取り上げた「勝負」は、世の中での勝負に勝つための秘訣が多く語られている素晴らしい良書です。

上では取り上げきれなかったものもたくさんありますので、興味があればぜひご覧になってみてください。

 

今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!