こんにちは、元公務員ブロガーのシュンです!
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今回は、地方公務員の昇進と成果主義の関係がテーマです。
本記事の内容
- 【人事課に聞く地方公務員の昇進】もっと成果主義を強くできないの?
- 先進自治体の首長は、人事にガンガン差をつけたがっている
先日、僕が県職員時代に大尊敬していた元人事課の方(現役県庁職員の方)にお会いした際の話をベースに構成してます。
【人事課に聞く地方公務員の昇進】もっと成果主義を強くできないの?
冒頭にも書いた通り、先日、僕が県職員時代に尊敬していた元人事課の方にお会いする機会があったので、その際に僕が疑問に思っている点を聞いてみました。
その疑問とはズバリ、
「県庁では40歳中盤以降にならないと昇進の差が出ないが、若手官僚が管理職として出向してくるのと同じように、職員間で大きな出世格差をつけることはできないのか?」
というものです。
官僚の方は、若くして地方に出向してきて30歳ちょっとで課長になったり、40歳後半で副知事になったりするにもかかわらず(大きくない市役所だと20代後半で副市長とかもあります)、どうして地方生え抜きの職員は40歳中盤くらいにならないと差がつかないのか、差をつけることはできないのかということを聞いたわけです。
元人事課の方の回答は、
もちろん内部の問題だからいくらでも変えることはできる。
問題は、その客観的評価基準を作るのが難しいということ。
例えば組合などからは「花形的な部署に行く人ばかりが評価され、例えば庶務的な仕事の経験が多い方などはいつまでも評価されないということになってしまう。それは機会の不平等ではないか」と反論がある。
そういった反論に十分対応できるだけの客観的評価基準を作るのはかなりハードルが高い。
とのことでした。
対して僕から、
そういう反論はあくまで建前であって、明らかに優秀な人のことは周りも分かってるし、実際幹部になってもいいような若手・中堅の方もいるじゃないですか?
と返したところ、元人事課の方も、もう一人同席されていた先輩も、それはもちろんと同意されていました。
若くても優秀な人、逆に歳を重ねていても出世すべきでない人は一目瞭然です。
そして結局のところ、若くて優秀な人が将来的にも出世していきます。(逆に出世すべきでない人もそれなりに出世していきます笑)
どうせ分かってるんだったら、どうして40後半とかにならないと差をつけられないの?という話を僕としては言いたいわけです。
仮にボトルネックが客観的な評価基準の整備だとしても、昇任試験的な仕組みにして面接で点数をつける仕組みとかにすればクリアできるはずです。
→面接なら結局は面接官の裁量ですから、まともな面接官を準備すればそれで済みます。実際、昇任試験を設けている警察官の場合はかなり極端な出世差があります。(同期であっても40歳警部(課長級)と40歳巡査部長(主任級)といった差があるように)
とは言え、人事課だけのレベルではそこまで大胆な改革はできないでしょうから、あとは首長クラスの覚悟の問題ですね。
ただ、組合をはじめ、職員から反発を買うおそれがあることをわざわざやりたくないでしょうし、そもそも人事改革を起こすメリットを感じていないケースがほとんどだとは思います。
実際、他の自治体の実態として極端な人事(例えば30歳ちょっとで管理職にするなど)をしているケースがあるのかと聞いたところ、それは聞いたことがないということでした。
また、
国の人事(出世)に準拠しているからあまり差をつけられないというのもある。
国の場合は入り口で大きく差をつけるが(→総合職(大卒)vs一般職(大卒・高卒))、自治体はそうなっていない(→一般職(大卒)vs一般職(高卒)というイメージ)。
というお話もありました。
個人的には国ありきで考える必要はないと思いますが、そういうこともあるようです。
先進自治体の首長はガンガン差をつけたがっている【奈良県生駒市長の例】
上で、多くの首長はそこまで人事改革の必要性を感じていないのではないかと書きましたが、もちろんそれは首長によります。
例えば、公務員の副業を解禁するなど先進自治体として知られる奈良県生駒市長は、公務員の終身雇用は10〜15年で崩壊するとした上で人事制度にも言及しています。
細かい話は以下の記事をご覧いただきたいのですが、
要は、「財政は一層苦しい」「今後AIが進展して定型業務は不要になる」、こうした前提の中で、「法令に沿って仕事をする前例踏襲型の人は必要なくなり、良いアイデア(稼ぐアイデアなど)を発想して行動できる人間が必要になっていく」と述べた上で、人事面に関しても以下のように語り、まさに今後差をつけていこうという意思が伝わってきます。
法令で定められた仕事をミスなく遂行することが求められる時代には自治体組織の同質性が大きな武器となっていましたが、地方創生時代に新しい挑戦が求められる今、年齢に関係なく地域に付加価値をもたらすことのできる職員を抜擢したり、中途採用者などの多様な視点を組織に持ち込んだりして、過度な同質性をあえて乱しにいくことが不可欠なのです。
引用 2019.6.2 ダイヤモンドオンライン「公務員の終身雇用制度は10〜15年で崩壊する」
生駒市長の想定は、日本の人口推計や社会保障制度を考えるとその蓋然性が非常に高いものです。
だからこそ市長の言うように、ある程度極端な人事制度(その他各種改革)を採用し、生き残りをかけるのが地方の理想の姿でしょう。
ある程度優秀な公務員の方なら、皆さんこの視点を持っています。(今回お話をしたお二人も当然持っています)
ただ、個人レベルでの意識と、組織の古い慣習を打ち崩せるかどうかは別の話だということです。(=そのためには首長のような権限が重要)
まとめ
ということでまとめます。
Q. 地方公務員において、出世面で露骨な成果主義を取れるのか?という問いについては、
A. 対内部(組合など)への説明の観点からも、かなり精緻な客観的指標を整えることが必要。そうなると事実上、極端な成果主義(例えば30代前半で課長になったり、逆に50歳でも主任とかだったり)をとるのは難しい。
県庁時代を振り返ると、若くても出世したいという野心家はそう多くなかった気がしますが、一方、どうしてこの人がこんなに上の階級で、こんなに給料貰ってるんだと感じるような人はかなりいました。
これは県庁時代、同期ともよく話題になった(もちろん批判的な意味で)ことです。
成果に応じてしっかり差をつけていく(仕事ができないなら出世させない→マネジメント能力がないのに幹部に出世するというのはどう考えても変)というのは、職員のモチベーションの観点からも非常に重要です。
ただ、人事が何もしていないかと言えばそういうわけではなく、元人事課の方からは、もちろん成果主義の必要性は強く感じており、少しずつだが具体的な対応をしている(→例えば、今までなら45歳で〇〇という階級につくことはなかったものを、特に優秀な人に厳選して出世を早めるなど)といった話がありました。
おそらくどこの自治体の人事もこのように工夫をしていると思います。
ただ、こうした現場レベルでの変革は時間も多くかかります。
独立してとにかく感じるのは、世界がものすごいスピードで回っているのに、役所はとてつもなくその意識が薄いということです。
大きな決断を下して一気に変えていくことが、他の自治体に比べ優位に立つ秘訣であるのは間違いないでしょう。
→つまり結局は首長次第ということですね。文中で取り上げた生駒市長のような首長がいるところと、そうでないところ(こっちが多数)ではかなり格差がつくだろうというのが想定されます。
なお、これから公務員を目指す方の場合、首長のスタンスでキャリアがまるで変わる可能性があるので、その点は最初に色々調べたほうがいいよ(→成果主義を望むにせよ、横並びを望むにせよ)ということをお伝えしておきます。
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!