こんにちは、元公務員ブロガーのシュンです!
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今回は、トヨタ社長の「終身雇用は難しい」発言を元に、公務員の終身雇用や年功序列への影響について考えていきます。
本記事の内容
- トヨタや経団連などで終身雇用は無理発言が相次ぐ
- 公務員の終身雇用や年功序列はどうなるのか?
日本トップ企業であり、十分な利益も出しているトヨタの発言だからこそ、そこには重みがあり、(今のところ)安定が売りである公務員においても人事面について深く考えるきっかけになるものだと思います。
トヨタや各種経済団体代表→「終身雇用は難しい」
5月に入り、各種経済団体の代表から、「終身雇用は難しい」という発言が相次いでいます。
「なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきたんじゃないか」「(終身雇用は)雇用をずっと続けている企業、そして税金をずっと納めている企業に対し、インセンティブがあまりない」
2019.5.13 豊田章男トヨタ自動車社長
「昭和の時代は大変よく機能した」「経済そのものが大きく変革した中で制度疲労を起している可能性があり、(終身雇用は)もたないと思っている」
2019.5.14 経済同友会の櫻田謙悟代表幹事(櫻田氏=SOMPOホールディングス社長)
「終身雇用を前提とすること自体が限界になる」「もうだめになりそうな事業を雇用を維持するために残すようなことをすると、雇用されている方にとって一番不幸」
2019.5.7 中西宏明経団連会長(中西氏=日立製作所会長)
みなさん図ったようなタイミングで発言してますね。(実際ある程度図ったんでしょうけど)
意図としては、解雇を簡単にすることで、企業にとってメリットがある形での人事システムを作りたい(そういう法整備を望んでいる)ということでしょう。
→当たり前ですが、人を削れば一番簡単に固定費が削減できますし、また、今後一層重視されるプログラミング系の人材などを流動的な形で採用していきたいという意図があると思います。
そもそもとして、いわゆる大企業を除いて終身雇用は既に崩壊していると思いますが、いよいよあのトヨタがそのことを大々的に口にしたということに大きな意味があると思います。
日本は30年でここまで落ちた
トヨタってそんなに苦しいのか?と言われれば、直近の純利益は約1.9兆円(2019.3月決算)を記録しています。
純利益はもちろん人件費が差し引かれたものですから、現状は人件費を払っても十分すぎるほどのリターンを得ているとも言えます。
また、企業価値を評価する指標である時価総額(=株価×発行済株式数)も、トヨタは世界35位(2018年)に位置しており、世界的な超一流企業であることは間違いありません。
一方で、過去30年間における他国企業との時価総額比較という大きな流れで見ると少し見え方が変わってきます。
以下、プレジデントオンラインから引用した、時価総額の高い企業のランキング比較です。
引用:2018.8.20ダイヤモンドオンラインより
平成元年(1989年)には、なんと世界トップ50に日本から32企業が入っていたにもかかわらず、平成30年(2018年)ではトヨタ1社(35位)のみ。
また、そのトヨタも1989年は世界11位だったわけですから、時価総額自体は増えていますが、相対的に見れば企業評価は下がっていると言えます。
つまり、明らかに日本の国際競争力はダウンしており、トヨタも例外ではなくなりつつあるということです。
ましてや、今後は自動運転車が主流になる以上、トヨタの敵はグーグル(時価総額3位)などのIT企業がメインになってきます。
その際、終身雇用の制度に縛られて、あまり必要とされないポジションに多くの人材を置いていても仕方がない、むしろそれでは国際競争力が低下する一方だという危機感を持っているということですね。
別にトヨタに限らず、今後どの企業においてもAIや前例の無い課題(=マニュアル的な大量生産では対応できない課題)への対応が重要になってきます。
その際、現在雇用している人材(特に中高年層)と今後必要とされる人材の間にはどうしてもミスマッチが生じざるを得なくなります。
終身雇用がベースにあり、人材面の流動性が確保しづらいという状況は、各企業にとって非常に大きなネックであるということです。
公務員の終身雇用や年功序列はどうなるのか?
いずれメスが入る可能性が高い
民間の目的はあくまで利潤追求であり、またそれは生き残るための至上命題でもあります。
利益を出して、会社に再投資をしてより良いサービスを提供するからこそ会社は生き残っていけます。
いくら今儲かっているからと、「純利益2兆円近くあるから現状維持でいいでしょう」みたいなスタンスを取ればすぐに凋落します。
一方で、公務員組織の場合はそうではありません。
現状、どんな自治体でも税収+借金(+補助金)で必要な収入を維持し続けることができているわけで(以前に夕張市という例外はありましたが)、民間に比べて数字に対する危機感をかなり抱きづらい仕組みになっています。
もちろんどの自治体も支出削減などの努力はしていますが、対症療法的な手当てに終始している傾向が非常に強いです。
(本物の危機感があれば、社会保障制度などは既にもっとエグいものになっているはずですし、効果の分からないような普及啓発事業や研修事業などは全て消滅しているはずです。もちろんこれは公務員だけでなく政治家の影響も大きいですが)
まして、今の段階で終身雇用や年功序列に手を出してまで人事制度をどうにかしようと考えるところはほとんどないと言えるでしょう。
問題は、この仕組みが果たしていつまで維持できるのかという点です。
確かに、現状維持でつじつまを合わせていくようなやり方は、過去の高度経済成長期ならそれで良かったわけですが、今の日本は以下の大きな問題に直面しています。
- 人口が減少し続ける(→経済は衰退し、税収も減っていく可能性が高い)
- 人口が減るにも関わらず高齢者割合は増えるため、社会保障費が増え続ける
特に、人口の問題が圧倒的に大きいです。
基本的に人口=経済です。人が衣食住のサービス需要を生み出し、需要があるから供給が発生します。
日本の人口は、2065年に約4000万人減の8800万人になるとされており(国立社会保障・人口問題研究所中位推計)、この極端な人口減少によって、将来の日本経済は非常に深刻な状況に陥り、同時に税収も大きく減っていく可能性が想定されます。
<参考:人口とGDPの関係比較>
2005年 | 2017年 | |||
人口 | GDP | 人口 | GDP | |
米国 | 2.96億人 | 1,430兆円 | 3.25億人 | 2,190兆円 |
中国 | 13.1億人 | 250兆円 | 13.9億人 | 1,370兆円 |
日本 | 1.28億人 | 520兆円 | 1.27億人 | 550兆円 |
ドイツ | 0.81億人 | 310兆円 | 0.83億人 | 410兆円 |
インド | 11.2億人 | 90兆円 | 13.2億人 | 290兆円 |
ブラジル | 1.85億人 | 100兆円 | 2.07億人 | 230兆円 |
中国・インド・ブラジルを見れば分かる通り、人口は経済成長において暴力的なほどの意味を持ちます。一方ドイツの例を見ると、人口があまり増えない中でもやれることはあるという学びにもなりますが、ドイツもこれから人口減少局面に移るため、やはりかなり厳しい状況に直面するであろうと想定されます。
世界的に有名な投資家ジム・ロジャーズ氏(世界三大投資家の一人。他はウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス)は日本経済について以下のように述べています。
借金は毎年膨張し、人口は毎年減少し続けているのだから、必ずそのツケが回ってきます。
もちろん、それは6ヵ月後とか20週間後に起きるわけではありません。短期的には、日本の株価はまだ上昇するでしょう。
しかし、20年後、30年後には、日本が大惨事に襲われている可能性は十分にあるということです。
引用:週刊現代「もし私が10歳の日本人なら…世界的投資家の「驚愕の問いと答え」」より
ロジャーズ氏の「借金は毎年膨張し、人口は毎年減少し続けているのだから、必ずそのツケが回ってきます」というのは、「食べていれば太りますよ」というのと同じくらいシンプルでわかりやすい話です。
物事の本質は基本的にシンプルです。
世の中で成功している人ほどシンプルな原理に基づいて行動しています。
もちろん、ロジャーズ氏の言うツケがいつ回ってくるのかは誰にも分かりません。
しかし、人口と経済の関係を踏まえて考えれば、ロジャーズ氏の言うような事態に陥る蓋然性は非常に高いと言えるでしょう。
このことを前提にすれば、政府や自治体も、いずれ各種制度や人事面に大きなメスを入れざるを得ない状況に直面することになります。
それは例えば、大胆な社会保障制度改革や、子どもを増やすための極端な施策、歳出上限規制などが考えられますが、その際には当然ながら人件費も聖域のままでいられません。
→「お金がないので社会保障は厳しくします。でも税金はきちんと払ってください。ただし、我々の給料は維持します。」なんて話が通用するはずはありません。(今はともかく、日本経済がいよいよ厳しくなれば、国民は決してそれを認めないでしょう)
このタイミングにおいて、公務員の終身雇用・年功序列も崩壊に向かっていくものと考えます。
また、今後はAIが一層進展していきますから、窓口業務やルーチンワークの分の人員をカットできる余地は大きく広がり、(ルーチンワークがなくなれば)業務の質に応じて職員ごとの差をつけやすくなっていくでしょう。
おわりに
公務員の終身雇用や年功序列がどうなるのかについて、僕なりの結論としては、
- 民間の雇用制度変革に比べると、公務員の変化は緩やかであると想定される(当面終身雇用や年功序列は維持される)
→利潤追求組織かつ熾烈な競争環境下にある民間に比べその危機感が薄いため(今の所、不足する資金は調達できる状況にある) - 一方、人口減少(=経済衰退・税収減少)と社会保障費の増大(=支出増)という将来像が濃厚である以上、今のまま安泰と考えるほうが不自然。社会保障制度改革を筆頭に、何らかの大きな改革がいずれかのタイミングで推し進められていくと想定される。
- その中で、公務員の人事面における改革も行われていく。
- その際には、AIの進展なども後押しし(窓口業務や単純作業は不要になる)、終身雇用や年功序列にメスが入る可能性が高い。
というものになります。
ちなみに、僕の元県庁の知り合いの方で本当に優秀な方たち(それこそ将来の部長クラス)も、人事制度の崩壊はほぼ必然と考えています。
それでは、公務員の方は将来に向けてどんな対策を打つべきなのでしょうか?
このことを考える際に重要なのは、結局全ての根幹は「人」にあるという視点です。
トヨタが終身雇用が難しいと言っているのは、例えば総務部門とか、工場の機械化で不要となる人材のことを指しているわけで、AI化に対応できる優秀なプログラマーなどはいくら高いお金を払ってでも雇いたいと思っているでしょう。
要は時代に対応できる優秀な人材なら引く手数多だということです。
これは公務員も全く同様です。
自分を磨き、今後の組織に必要とされる人材になっていけば、別に終身雇用が崩壊しようが困ることはありません。
例えば、こんな施策を行えば成果に繋がるだろうという仮説を立て、AIに適切な指示を出しながらその仮説を検証していくといった能力を持つ方は、今後の公務員組織にとって非常に重要な人材です。
→要は自分で課題をセッティングして、それを解決するための仮説を立て、PDCAを回していける人ですね。
逆に、指示してもらう通りにやれば正解にたどり着けると考えている人の場合、淘汰されていくことになるでしょう。
今回のニュースの意義は、自分たちの将来像を真剣に想像し、その上で何をすべきかどうかを検討するきっかけになるというところにあります。
現役公務員の方であれば、ぜひ今回の話をきっかけに、今後何をすべきかについて考えてみると良いのではないでしょうか。
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
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