こんにちは、元公務員のシュンです!
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10日に平成30年人事院勧告が実施されましたが、人事院は同時に国会と内閣に対して「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」を行っています。
ここでは、人事院の申し出を踏まえ、国家公務員の定年延長について解説していきます。
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といった点が気になる方はぜひご覧ください。
国家公務員の65歳への定年引上げは確定的
まず結論をまとめました。
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下で詳しく解説をしていきます。
人事院の意見申出と過去からの経緯
人事院は、定年を60歳から65歳へと段階的に引き上げるべしと意見申出
人事院は8月10日、国会と内閣に対し、国家公務員の定年引上げに関する意見申出を行いました。
要は、段階的に65歳まで定年を引き上げるべしということを言っています。
これを受け、政府は2019年通常国会に定年延長に向けた国家公務員法の改正法案を提出する方向で動くようです。
定年延長に向けた経緯(要は昔から議論され、結論が出たということ)
65歳への定年延長に関する経緯は以下の通りです。
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ごちゃごちゃと書いてありますが、要は、ぽっと出の話でも何でもなく、議論のスタートはずっと昔で、そこから多くの検討がなされてきて最終段階に来たということです。
ポイントとしては、上の表内でも線を引っ張りましたが、
- 人事院が定年延長を申出(2011年)
- 内閣の指示で事務レベルの検討会を実施
- 検討会で65歳への段階的引上げの方向で検討すると結論を出し、人事院へ詳細検討の要請
- 人事院が再検討を実施の上、定年延長を申出
という流れであり、これを見れば分かる通り、完全に外堀は埋まっています。
(それにしても、検討会で、「65歳への引上げの検討をする」という結論を出すってどうなのよって感じはしますよね・・・笑)
つまり、定年延長は確定的であり、あとは具体的な制度設計をするという段階だということです。
(というか、人事院は改正要綱まで出して、かなり細かな制度設計について言及していますので、あと詰めるのは実施時期くらいでしょう)
いつから定年が延長されるのか?
2021年度から3年ごとに1歳ずつ引上げか
人事院は、「法の施行される年度から段階的に引き上げ、最終的に65歳とする」と言っているだけで、具体的にいつからどういうスパンで引上げるかというところまでは述べていません。
政府では今回の申出を受け、2021年度から3年ごとに定年を1歳引き上げ、2033年度に定年を65歳にする方向で検討していくといったことが報道されています。
つまり、2021年→61歳、2024年→62歳、2027年→63歳、2030年→64歳、2033年→65歳ということですね。
定年延長により、役職や給料は具体的にどうなるのか?
役職定年制を設け、管理職の定年は60歳とする
定年を延長した際に役職や給与の扱いはどうなるのかという点について、人事院の資料では以下のように示されています。
60歳前の職 | 60歳以降の職 |
本庁(局長・審議官・課長)、出先(機関長・部長・課長) | 専門スタッフ職or課長補佐級へ任用替え 年収は5〜6割に下がる可能性も |
課長補佐以下 | 役職はそのままで年収は7割程度へ |
まず役職の話については、役職定年制というものを設け、管理職の定年は60歳にして、60歳を超えた方は降格しますよということですね。
これ、周り(特に上司)は嫌でしょうね(笑)
さすがに局長が課長補佐として降りてきて色々と言われたら非常に進めずらいでしょう。
(色々と例外規定を設けるようなので、それは実質的に無いのかもしれませんが)
どちらにしても、60歳過ぎた人は扱いずらいから、実質的に何もやらないで座ってるだけになるというのは最悪ですね。
それこそ税金の無駄です。
この辺の運用は非常に重要になってくると思われます。
給料(年収ベース)は60歳前の7割にする
給料面については、年収ベースで60歳前の7割になるよう調整する(60歳前のポストが高い人であれば5〜6割に落ちる可能性も)となっています。
このようにする理由は、簡単に言えば財政が厳しいからですね。
単に定年を延長するだけでは人件費が増大します。
というわけで、何らかの抑制策を同時に取る必要があるということです。
一方で面白いのが、人事院が示しているデータを見ると、定年延長もしくは定年撤廃を実施している民間企業(13.0%)のうち、6〜7割の企業が60歳になっても給与の減額をしていないということです。
60歳で給与減額をしている2〜3割の企業が給与を7割程度にしているということで、公務員は財政が苦しいのだからこの少数派に乗ろうということですね。
そもそもとして、給与の額は、その人が与えた付加価値によって決まるべきであり、年齢で決まる話ではありません。
ただ、それでは公務員も給与を削減すべきではないかと言えば、組織として財政が苦しいのであれば給与を削減するのはむしろ当然の話ですし、やむを得ないでしょう。
一方、今回の延長をきっかけに能力主義的な部分を大いに強め、年齢とともに順当に出世し給料が上がっていく仕組みを大きく見直していけば、年功序列で人件費が増える部分を押さえられますから、60歳以降だからと一律に減額をせず、むしろ人によっては増やすのも全然アリだと思いますし、それが組織として自然な形ではないかというのが僕の意見です。
地方公務員への影響について
当然に国に追随する
今回の定年延長案はあくまで国家公務員に関するものであり、地方公務員は別(所管法が別)です。
一方、地方公務員法では、
「国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする」
とされており、もちろん絶対に65歳にしなければならないわけではないですが、国が改正されれば追随していくのが自然な流れということになります。
ここはさして議論の余地がありません。
民間への影響について
民間はさほど大きな影響を受けないのではないか
この定年延長を民間へも波及させるのが国の狙いです。
将来的には高齢者雇用安定法(定年を60歳と定めている)を改正していくことになるでしょう。
一方で、民間に波及をさせたとしても、賃金面で見れば民間はあまり大きな影響を受けないのではないかと僕は見ています。
先ほど、給与がどうなるのかというところで、定年を延長もしくは撤廃した13%の民間企業のうち、年齢を理由に給与を下げたところのほうがむしろ少数派だという話をしました。
ここだけで見ると、定年を延長した場合、多くの企業が賃金を下げずらいのかなという印象があるかもしれません。
一方、定年を延長・撤廃した13%以外の87%の民間企業が、定年延長や撤廃ではなく、継続雇用制度を導入(60歳で一旦雇用契約は終了し希望者と再契約)していることになりますが、その際の労働条件は、
- フルタイム勤務が大半(人事院が今回提示しているデータによれば92.8%)
- 継続雇用でフルタイム勤務をしている場合の給与は定年前の65.4%水準(人事院:平成29年職種別民間給与実態調査より)
となっています。
つまり、民間は現状でもフルタイムで継続雇用をしているところが大半であるため、公務員が60歳以降の給与を70%へ減額するという前例を作っていくのであれば、民間はそれにならえば大きな影響もなく継続雇用制度から定年延長にスライドできると言う理屈になります。
(もちろん賃金面以外で、退職金の支給時期が遅れる件などで色々な調整は必要でしょうが)
今回提案されている70%の給与水準というのが、非常にうまく作られているというか、民間のトップクラスの方々とも十分に調整しているのだろうなというのが伺えます。
今後も定年は上がっていくのか?
今回の定年延長の理屈は、年金支給が完全に65歳からになることとの整合性を取るため
定年と密接な関係にある年金の支給時期ですが、基礎年金支給は65歳から、報酬比例部分は段階的に引き上げ中で2025年からは65歳からの支給ということになります。
60歳の定年から報酬比例部分の年金が支給されるまでの空白期間を埋めるために、公務員であれば再任用、民間であれば継続雇用(もしくは定年延長・定年撤廃)が義務付けられています。
一方、公務員の再任用の場合は、役職が大幅に下がる(主任・係長級が多い)上に、短時間勤務労働者がかなり多い(人事院の資料ではH30年度で82%)といった実態があります。
(民間企業はフルタイムで継続雇用を行うケースがほとんど(人事院の資料では92.8%)ですが、もちろんパートタイマーとして大幅に賃金が下がるケースもあります)
よって、年金支給が完全に65歳となる前にこうした状況に対して手を打っていく(定年を上げる)必要性があるということです。
定年が延長されると、基本的に労働条件はそのまま(60歳まで正社員としてフルタイム勤務をしていたのなら同条件)で勤務を続けるということになります。
一番の狙いは年金支給開始時期を更に遅らせること=定年も再度の引上げが想定
65歳の年金支給に合わせるためというのはむしろ短期的な話で、長期的に見れば、国は年金支給開始時期を今後もどんどんと遅らせていきたいということがあります。
(長期的どころか、本当はすぐにでもやりたいところでしょう)
日本の尋常でなく苦しい財政面と、今後の大幅な人口減少・高齢化を考えれば、現行の賦課方式による年金制度(現役世代が払うお金を高齢者に支給する)を維持するのは大変に厳しい状況です。
今後予測されるシナリオとしては、
- 定年を65歳まで延長
- 年金支給を70歳に段階的引き上げ(引き上げ中は今と同じような再任用・継続雇用的な制度を用いる?)
- 定年を70歳まで延長
- 年金支給を・・・
寿命が延びていく限りはこの果てしない繰り返しでしょう。(その前に制度が破綻する懸念ももちろんありますが)
おわりに(定年延長を見てげんなりした方へ)
今自分が何歳かにもよるところもありますが、上にも書いた通り、定年は今後どんどん延長されます。
平均寿命を見れば、2040年には男性の平均寿命は83歳、女性は90歳(現在は81歳、87歳)と内閣府で試算されています。
それどころか、大きな医学的進歩があって100歳を一気に超えてくる可能性もあると思います。
もちろん、AIやブロックチェーン技術などを含めた大きな改革の中で、そもそも働かなくても生きていけるという流れが構築される可能性も十分にありますが、それはあくまで可能性の話なので一旦置いてくとして、寿命の延伸と、現行年金制度では国の財政が一層苦しくなるというのは確定的な未来ですので、定年はどんどん延ばして出来るだけ長く働いてもらい、年金は出来るだけ抑制する方向に持っていきたいというのが国のごく自然な思考です。
(もちろん年金制度を変えるという決断もあります)
今の仕事が楽しいからずっとバリバリ働きたいと思う人であればいいと思うのですが、定年延長が繰り返される将来を想像した時に凄くげんなりしてしまうというのであれば、当然に新しい仕事の方向性も模索すべきでしょう。
(また、この話を県庁の元同僚に話をしたら、70歳定年など考えただけで恐ろしいと言っていた(笑)ので、そういう方は結構いるのではないかと思います。もちろん公務員に限らず民間も。)
幸いなことに、今後は個人がその信用をベースにして稼いでいくというトレンドが一層強くなりますから(Youtuberなどは分かりやすい例でしょうし、それ以外であっても仮想通貨をはじめとしたブロックチェーン技術の台頭がそれを可能とします)、人によってはその辺りの流れも踏まえての舵取りを本気で考えていくべきかなと思います。
(公務員も副業を解禁していく方向ですから、仕事を辞めない中でも色々な道へのシフトを模索できる流れになっていくと考えます)
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
あわせて読みたい
↓公務員の人事(異動、出向、不祥事と処分など)が気になる方には、こちらで記事を網羅的にまとめています。
↓国家・地方公務員の年齢別給与や年収など、「あらゆる公務員の給料データ」をまとめた記事はこちら(多分日本一詳しいです)
2018年で52歳の、公務員です。
定年延長が計画通りなら、2029年で63歳の退職となります。
ところで、
退職金の扱いは、どうなるのですかね?
退職金は、直近の給与から計算して導きます。
60歳以降は給与が70%に下がる計画なら、63歳時点での
直近の給与から計算するのでしょうか?
コメントをいただきありがとうございます。
今回の制度改正による退職金の影響については以下で記事を書いているので、よろしければご覧いただきたいのですが、
https://jiseki-koumuin.com/retirement-3/
おっしゃる通り、退職金は「給料×支給割合+調整額」で計算されるため、「給料」が7割になるとすれば基本的にはかなりのダウンが想定されます。
しかし、制度改正直後はどうしても皆さん60歳で辞めた場合との比較を意識しますから、露骨な減額はできないと思います。
上のURLの記事の中に以下のように書きました。
「支給割合を増やさない限り、退職金は大幅に減額となります。
しかし、当然それでは職員の抵抗に合いますから、支給割合を大幅に増やす制度改正を行うとか、退職金は今後も60歳時点の俸給や階級をベースに計算するとか、少なくとも60歳で辞めた時に比べて大幅に退職金が下がらないような工夫はするのではないかと思います。
ここで重要なのは、60歳超になったら俸給を減らし、管理職は降格だと明確に言っているということです。(例外もあるようですが)
財政的に厳しいからそういった方針を打ち出しているのに、5年多く働いた分、退職金も単純に5年分割増になるよねというのはまずあり得ないでしょう。」
これが今のところ僕なりの仮説です。
具体的には、例えばくえるさんが60歳で2500万円貰うはずだったとすれば、63歳では2500万円トントンくらいになるのではないかなと思います。(ちょうど激変緩和措置が取られるところご年代なのかと思います)
地方公務員です。
興味深く読ませていただいております。
今年度を含めて残り3年で定年退職を迎えますが、定年延長を段階的に進める話しがあるとのことで、2021年から1年延びると、私は2021年度で退職とはならなず、2022年度が退職と理解すればよろしいのでしょうか?
いつもありがとうございます。
ご質問の件ですが、ごりごりさんのように、もろに影響を受ける方に対して激変緩和を取るかどうかということになるかと思いますが、ちょっとこればかりは今後の制度設計次第なのでなんとも分かりません。
ただ、人事院によれば短時間勤務の併用について言及されています。
つまり、60歳の段階で短時間勤務に切り替えて定年まで働くという形を併用して認めるようです。
仮に激変緩和が無かったとしても、できるだけ早く辞めたいという人はこの形を使っていくのかなと思います。