こんにちは、元公務員ブロガーのシュンです!
いつも当ブログをご覧いただき感謝しております。ありがとうございます!
今回は「某県庁の元人事課の方(Xさんとします)」から、人事ネタに関する寄稿をいただきました。
テーマは「公務員の罪と罰」
不祥事の種類や処罰の内容について詳しく解説をいただいています。
元人事課というまさに公務員の不祥事専門家(かつ、人脈が幅広く、県庁の様々な裏事情にめっちゃ詳しい方(笑))が書いた内容ですので、非常にリアリティに富んだものになっています!
現役公務員Xさんから、今回寄稿いただいた内容の紹介
今回は公務員の処分について寄稿しました。
以下3つのテーマで書いています。
- 処分の種類
- よくある不祥事と処分の事例
- 給与への影響
わかりやすく噛み砕いたつもりです。
厳密には自治体により少し違いますが、まあまあこんな感じかなと思います!
①公務員の処分の種類
免職
いわゆる「クビ」です。
これは説明するまでもないですね。
停職
出勤停止、自宅謹慎処分です。
停職期間中は仕事しなくていいや、ラッキーと安易に考えてはいけません。
停職中は無給ですし、後々の公務員生活にいろんなダメージを引きずります。
減給
例えば減給1/10 1ヶ月、などの処分が下されます。
「なんだ、それだけか」と思うかもしれませんが侮れません。
ボーナスの査定に影響します。(後で詳しく見ていきます)
戒告
これは少しわかりにくいですが、文書などで正式な注意を受けることです。
毎月の給料には影響が出ませんが、ボーナスの査定が自動的に最低ランクになります。
どれだけ他で成果を挙げていても無意味です。
なぜなら、公務員としての基本中の基本が守れていないとみなされるからです。
運用上の処分
これは、慣例として行われている「厳重注意」などです。
とはいえ、単に課長に怒られる、というものではありません。ある日突然、総務部長室に呼び出されます。
主に上司の管理監督責任を問うもので、儀式みたいなものですね。
上司として決裁に印鑑を押していた場合などがこのケースに当たります。
実際は、「不祥事を起こす部下を持って運が悪かったね」程度の扱いのようで、大きなペナルティはなさそうです。
いわゆる「更迭」や「左遷」
不祥事や都道府県政で問題が発覚した時(例えば建物の耐震性がないことがわかった、など)のときは、人事異動により制裁が与えられることがあります。
とはいえ、問題が発覚したときはだいたいその担当者が着任する以前からおかしいことがほとんどです。
運が悪かったと思うしかありません。
公務員の世界の左遷は給料が下がることはありません。(実質的に格は落ちます、例えば県庁の課長だったのに地方の事務所の所長にされる、など)
②公務員の不祥事の事例と処分例
公務員の世界でよくある不祥事と処分例を取り上げてみます。
なお、役所の処分は、国や他自治体の事例に均衡させるという、まさに前例踏襲が行われるのが通例です。
これは個人的に正しいと思っています。
罪による処分の基準があらかじめ決まっていることにより、抑止効果もあるからです。
飲酒運転
みなさんは2006年に、福岡市で職員が死亡事故を起こして世間の批判を浴びたことを覚えているでしょうか。(福岡海の中大橋飲酒運転事故)
あの頃を境に公務員の飲酒運転の厳罰化が始まり、役所でも懲戒免職が乱発され、退職手当も不支給が当たり前とされました。
しかし、「自損事故なのか対人事故なのかなども考慮せず、これまで何年も働いてきたのにクビにした上で退職手当もなしでは処分が重すぎる」ということで、その後、飲酒運転=懲戒免職はやりすぎだという裁判所の判例が出ています。
1.深夜まで酒を飲んで帰りに車を運転して信号無視して人を引いて逮捕された
2.前の晩に少し飲んだお酒が抜けておらず、朝にたまたま検問で呼気にアルコールが微量に含まれていた
ただ、全く同じ飲酒運転の事故でも、A県では懲戒免職、B県では停職、はありえます。まさに、裁量権の範囲内、なのです。
どちらにしても、飲酒運転は非常に重い処分が下されます。
最低でも停職は確実。
対人だと懲戒免職は免れないでしょう。
→退職手当に関しては、勤続年数に応じた給料の後払い的な性質があるので、懲戒免職=一律不支給というわけではありません。
もちろん擁護するつもりはありません。
飲酒運転は自転車でもアウトです!!
痴漢、わいせつ行為、盗撮など
真面目な人が多いせいか、魔が差してしまうケースは後を絶ちません。
私の知っているケースでは、課長補佐の内示が出た後で事件が発覚し、昇進が取り消された例もあります。
未成年や教員が教え子に手を出すケースを除いて、いわゆる痴漢や公然わいせつなどでは懲戒免職にはならないようですが、停職、減給は免れません。
もっとも、クビにならなくても、戻ってきたときの周りの目が冷ややかです。
職務専念義務違反
仕事中に株取引してた、ネットゲームばかりしてた、などです。
タバコとかはグレーになってますが(おそらく、今は上層部の高年齢層にまだ喫煙者が多いから)これから厳しい目に晒されそうです。
なお、私は喫煙しませんが、個人的には、仕事はアウトプットで評価されるべきなので、ちょっとくらい息抜きしてもいいじゃんとは思いますけどね。
処分としては、減給・戒告が相場のようです。
副業(職務専念義務違反)
最近流行ってますが、公務員の世界では認められていません。
おそらく認められるとしても、NPOや地域活動などで公益性のあるものから部分的に解禁されるはずなので、純粋な営利活動はまだまだこれからです。
これも職務専念義務違反に当たります。
なぜか農業はいいみたいですね。謎です。
処分としては減給・戒告が相場のようですが、度が過ぎると停職になります。
欠勤
公務員は有給休暇が年間20日、それ以外にも夏季休暇や病気休暇などたくさんのメニューがあります。
それらの休みを全て使い果たし、「病気」とは言えない理由(要はズル休み)で休むパターンです。
その時点でどうしようもないダメな職員であることはほぼ間違いないのですが。。。笑
正規の職員が欠勤するまで休み込むケースは極めて稀です。
こちらも減給・戒告が相場のようですが、度が過ぎると停職になります。
業者との癒着、談合などの不正
公共事業の発注などでそれなりの役職にいる方がおこなう例が多いようです。
→予定価格を漏らすなど。
正直なところ、民間事業者との良好な人間関係は、公務遂行の上で非常に重要ですが、隙を見せて行き過ぎると思わぬところで足をすくわれることがあります。
贈収賄などは刑事告発されます。
一発でアウトです。
虚偽記載やねつ造、紛失、秘密の漏洩
決裁を経ずに公印を押して公文書を作成したりすることです。
森友学園や加計学園でも、決裁後の文書の差し替えが問題になりました。
地方レベルでは、許認可等の事務において、仕事がたまっていて処理するのが面倒になってやってしまったという場合が多いようです。
減給や戒告に相当します。
不正な経理
私見ですが、不正な経理には3種類くらいあります。
①重大なミス
例 適切な手続きを経ずに予算を流用した
②ダメだとわかっていて組織的にごまかしたケース
例 終わってない工事を終わったことにして書類を作成して公金を支出した
③私腹を肥やすための処理を行った
例 生活保護費を着服した
もちろん、①から③になるほど悪質です。
減給、戒告に相当します。
仕事ができないからという理由で免職になることはまずない
「単に仕事ができないという理由でクビ(免職)になることはまずない」と言って良さそうです。
それでいいのかな。。。とも思いますが。
③処分が及ぼす給与や退職金への影響
給与への影響
処分がどれくらい給与に影響を及ぼすか試算してみました。
例えば35歳くらいの職員で、東京勤務の場合です。(毎月30時間ほど残業していると仮定)
処分内容 | 年収 |
通常時(処分なし) | 約700万円 ※今回、東京勤務で試算しましたが、地域手当がすごいですね。地方に勤務している私としては驚きの水準です。 |
停職6カ月 | 約350万円 ※6ヶ月無給であり、期末勤勉手当の在職期間が除算されるので大幅に落ちます。 |
減給1/10 1か月 | 約670万円 ※思ったほど影響ないですが、直後の勤勉手当が大幅に落ちます。 |
停職や減給だと昇給しませんし、昇格(→主任から係長になったりすること)も当然しません。
若いうちは昇給のペースも早いため、将来に向かってその影響がいつまでも解消されないので、トータルで見ると影響額はさらに大きくなります。
また、間接的な影響として、降格させられたり、同期より昇格が遅れたり、地味な部署や地方に飛ばされたりすることもあり、額面の影響だけではありません。
退職手当(退職金)への影響
免職には一般的に次のようなケースがあります。
- 懲戒免職
有無を言わさずクビです。最も重い処分ですが、滅多にありません。
- 諭旨免職
いわゆる、退職を促すケースですが、法令上はこのような扱いはありませんし、やりすぎると逆に使用者が訴えられます。
警察官などは慣例としてこのようなケースがあるようです。
懲戒免職との違いは「退職手当」が満額出ることです。
懲戒免職の場合、退職手当への影響があります。
「退職手当の支給制限」と言われています。
ケースバイケースですが、最悪もらえない可能性がある、と考えた方がいいでしょう。
地方公務員の退職手当は2000万円くらいですので、定年間近の窓際の人がリスクを取らずに軟着陸を目指す気持ちもわからなくはないです。
→彼らが悪いのではなく、制度がそうさせてしまっています。
社会的な制裁
さて、処分が重くても軽くても、どちらにしても、軽微な犯罪でも実名が報道されてしまいますし、ネットには永遠に情報が残ります。
案外これが一番辛いかもしれません。
それに、復職したとしても、職場での信用も地に堕ち、家族にも後ろめたい気持ち(子供がいじめられるなど)、友人にも顔向けできなくなり、何より金銭的に困窮します。
過去を変えることはできません。
痴漢で懲戒免職になることはありませんが、いままで役所では偉そうにしてた課長も、建物の外で痴漢をしたことにより、建物の中でも「ただの変態」扱いです。
自分は偉い、権力を持ったと勘違いしないで謙虚な気持ちは忘れないでいたいものです。
おわりに
自分には関係ないと思う方が多いかもしれませんが、秘密の漏洩、公文書や備品の紛失などは、誰にでも降りかかる可能性はあります。
明日は我が身、気持ちを引き締めたいものですね!!
普段の仕事で大変お忙しい中、とても詳しい解説をいただき本当にありがとうございました!
第二弾の寄稿も近々ある予定ですので、皆さんお楽しみに!
今回も貴重なお時間の中で文章をご覧いただきまして、本当にありがとうございました!
>>公務員の人事(異動、出向、定年延長など)について網羅的にまとめた記事はこちら
懲戒処分待ちの現役消防士について 聞いていただきたい話があります。メールで少しやり取りしていただくのは可能ですか?
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